コロナの前まで、「世界の果てまで行ってQ」で世界中を飛び回っていたイモトアヤコさんは、テレビや紙面で度々パスポートのページの増補のことを語っていました。国連事務総長の警護をしていたころの私は、イモトさんと同じように世界中を飛び回っていたので、パスポートの増補をしていると思われがちで(ページを増補したパスポートを)見せてくださいと言われたことが何度かあります。しかし、私は残念ながらパスポートのページ増補申請をしたことが一度もないんです。
それはなぜかというと、国連職員は仕事(任務)で海外に行く際、私物のパスポートではなく国連職員用のパスポート「United Nations Laisse-Passe (以下、UNLPという)」を使用するからです。ちなみに「Laisse-Passe(ラセパセ)」は、6つある国連の公用語の1つフランス語でパスポートを意味します。※日本語は残念ながら、国連の公用語ではありませんので、日本人が国連職員を目指す場合には、6つの公用語(英語、スペイン語、フランス語、アラビア語、ロシア語、中国語)のいずれかを話せる必要があります。
UNLPには、赤と水色の2種類があります。赤いUNLPは、D2レベル以上の職員に与えられ、残りの職員は水色のUNLPになります。つまり国連事務総長や日本人だと日本人女性初の国連事務次長(軍縮)に就任された中満泉さんは赤いUNLPを所持されています。
UNLPは、アメリカでは使用が認められていませんが(その代わりに国連職員など国際機関の職員にはGビザが与えられ、アメリカ入国の際にはDiplomat用の特別レーンが用意されており、指紋なども免除されています)、その他多くの国では使用が認められています。日本人である私は、日本に帰国する際は私物の日本のパスポートを使用しますが、同僚たちはUNLPに日本のビザを取得して入国します。国連との関係が密な国にいたっては、ビザが免除されUNLPのみで入国が認められている国も少なくありません。
海外出張が多い警護チームには、ページ増補は行わずにページが足りなくなると新しいものに取り換える措置が取られていました。そのため、UNLPもページ増補の申請をしたことがありませんが、10年の警護で溜まったUNLPの数は5冊になりました。
ボディガードが専門ですが、国連により興味がある方も多いようなので、時々国連職員には普通のことでも一般的にはあまり知られていないようなことも当ブログで紹介したいと思っております。
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