「警護」と「エスコート」

日本の警備会社に勤めた経験がないので、日本の警備業界の内情にはそこまで詳しくはありません。

ただ職業柄、4号警備(警護)に従事する警備会社に勤める方と話をする機会は少なくないです。これまでいろいろ話を聞いてきたことをまとめると、警護員1名でも「警護」と呼んでいる傾向にあることがわかりました。

ちなみにアメリカの警護業界では、1名の場合には「警護」ではなく、「エスコート」と呼ばれます。予算の関係上、警護よりもエスコートの仕事の方が多い民間警護会社も少なくないようです。私が勤めていたニューヨークの国連本部でもエスコートのサービスはありました。さすがに事務総長はチームで「警護」をしますが、「Threat Analysis and Risk Assessment (脅威分析とリスクアセスメント)(※以下『TARA』という)」 により警護チームを付ける必要性がないと判断されたVIPには、便宜上の目的で警護員が1名だけつくいう形をとっていました。

※民間では、TARAで評価が低いクライアントでも、金銭的に問題がなく依頼があればチームで警護することもあるようです。

TARAの評価が低いVIPの多くは、随員が少ない傾向にあります。そのため、エスコートもこのクライアントの随員の1人としてカウントされることもしばしばあります。エスコートだということを知らないクライアントのゲストから挨拶をされることがあったりもします。その際に「エスコート」と自己紹介するのでは、恰好がつきません。そんなときには「Security Liaison(セキュリティ・リエゾン)」や「Security Advisor(セキュリティ・アドバイザー)」と自己紹介すると少し恰好がつきます。

名刺交換

「警護」と「エスコート」は、業務上でも大きな違いがあります。

国連の「United Nations Manual of Guidance on Protetive Services 」では、「警護(Close Protection)」と「エスコート(Security Liaison)」は以下のように定義されています。

Close Protection Operations are defined as the 24/7 provision of multiple Protective Officers, armed, in concentric layers of defense around the Protectee to prevent or minimise the effect, primarily though extraction from the area, of an attack intended to cause physical harm or embarrassment.

Security Liaison Officers are defined as single officer deployments designed to provide the Protectee with security aware expertise in circumstances where the assessment has identified no specific threat against the Protectee. Security Liaison Officers are not required to be with the Protectee 24/7, but are provided as a security aware focus, able to identify failings in programme, hotel or vehicle arrangements which might expose the Protectee to unnecessary risk.

「警護」は、クライアントから必要とされる限り、クライアントからひとときも離れることなくクライアントの安全、安心を護ります。

それに対して、「エスコート」の主な仕事はクライアントに対して、 治安やリスクを説明し、クライアント自身が「現地の治安とリスク」を理解することに努めることです。「エスコート」であっても、出来る限り、クライアントのそばにいるように努めますが、必要があれば離れることも許されます。なんらかの理由で、クライアントのそばを一時的にでも離れる際には、クライアントに事情を説明して連絡先を伝え(※警護開始前にするクライアントインタビュー時にかならず連絡先は伝えるので既に知っているはずですが、そのたびに確認をすることが重要です)、いつでもすぐに連絡が取れるようにする必要があります。エスコートは、クライアントのそばを離れることを許されていますが、離れるタイミングを見極めるセンスが必要になります。

クライアントの多くは、「警護」と「エスコート」の違いを分かっていません。エスコートであっても、何か問題があれば警護と同じように責任を取らされることもしばしばあります。なので、民間警護は契約時にきちんと「警護」なのか「エスコート」なのか、「エスコート」であれば、そばを離れる時もあることを説明する責任があります。


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