ボディガードとエレベーター

ボディガードにとっては、エレベーターも可能ならば使用を避けたいと思う乗り物の1つです。

日本では、建築基準法労働安全法でエレベーターの所有者・管理者は定期検査報告と性能検査が義務化されており違反すると罰則を受けることになります。しかし、機械ですから、定期検査をしていたとしても故障するときは故障します。故障によりエレベーター内に閉じ込められたりするのはボディガードとしては避けたいところです。

そういった理由から、アメリカ大統領を警護するシークレットサービスも出来るだけエレベーターは使用せず階段での移動を選択しています。毎夏ニューヨークの国連本部で行われる国連総会で国連事務総長は各国のトップと二者会談をします。その際、いくつかの会談場所が用意されているのですが、アメリカ大統領は必ず階段での移動が可能な階の会談場所を選択していました。

健康で歩くことに支障のないクライアントの場合、国連の警護チームも1,2階程度ならばエレベーターではなく階段を選択していました。しかし、歩行困難なクライアントだと、低層階であってもエレベーター以外に選択肢がない場合もあります。

エレベーターを使う際には、アドバンスが事前に直近で点検した日の確認と、故障が起きた際の連絡先を調べます。過去に故障によるトラブルが起きたことがあるかの確認も重要です。最大積載量の確認も忘れてはいけません。最大定員が10人と記載されていても、スペース的に10人も入れないエレベーターも存在します。事前に何人乗れるか分かっていれば、クライアントと一緒にエレベーターに乗り込む人の人選が出来て、スムーズにことを運ぶことが出来ます。

1人でのエスコート任務の際には物理的に無理ですが、2人以上いる場合には、クライアントと一緒に乗り込むボディガードの数を絞り、故障が起きた際にすぐに対応できるようにエレベーターの外に最低1人は待機させておくべきです。エレベーター内のボディガードは外で待機するボディガードと無線もしくは携帯電話ですぐに連絡が出来る状態にしておく必要もあります。

幸い国連事務総長の警護の際には、エレベーターを専用モードにして対応をしてもらえることも多く、比較的警護はしやすかったのですが、毎回そうした対応をしてもらえるとは限りません。ボディガードは、色々なシチュエーションを想定して策を練っておく必要があります。

エレベーターを待つ際は、中から誰か人が下りてくる可能性もあるのでドアの正面にはボディガードが立ちます。ドアが開いたら、ボディガードがまず中を確認して異常がなければクライアントをエレベーター内へと誘導します。その際は、「開く」ボタンを押すだけでなく、急に閉まったりしないように手でドアを押さえるようにします。

クライアントが乗り込んだら、素早くドアを閉め目的の階のボタンを押します。ドアが開いた際に誰がいるか分からないので、エレベーター内では目的の階に着くまでボディガードはドアの前に立ち、クライアントはエレベーターの奥に立たせます。外が見えるガラス製のエレベーター(展望用エレベーター)の場合には、クライアントを窓から少し離れた中央部に立たせるようにします。エレベーターを関係者以外とシェアをする場合には、クライアントを奥の隅に立たせ、ボディガードはその前に立つようにすると良いでしょう。エレベーター内にボディガードが2人以上いる場合には、1人をエレベーターのドアの前に立たせておくと更に良いです。

エレベーターに一緒に乗り込まないボディガードが2人以上いれば、1人を目的階へ先に送っておくことが出来ますが、1人しかいない場合にはクライアントが乗ったエレベーターが目的階に着くよりも早く階段を駆け上がる(下りる)必要があります。エレベーターのドアが開くまではハァハァ息を切らしていても、ドアが開いた瞬間から何事もなかったように涼しい顔でリード(先頭)としてクライアントを先導します。このようなことがあるので、ボディガードは日頃から体力作りをしておくことが大切です。

ボディガードを実際に経験したことがない人は、たかがエレベーターだと思うかもしれませんが、プロのボディガードは小さなリスクでも見逃すことは許されません。


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