クライアントはボディガードにとってあくまで依頼人であり、家族でも友達でもありません。しかし、警護をするうえでクライアントのことをある程度知っている必要があります。
新たなクライアントを警護することになったら、まずクライアントと話をして必要な情報を収集します。これを「クライアント・インタビュー」と呼びます。クライアント・インタビューは警護の期間に関係なしに必ずすべきです。
ボディガードが、クライアントのイニシャル・インタビュー時に必ず聞くべき事項は以下です。
- 氏名
- 生年月日
- 血液型
- 身長+体重+靴のサイズ
- 職業+役職
- 自宅住所
- 勤務先名+住所
- 家族構成
- アレルギー
- 持病+常用薬
- 主治医+かかりつけの病院
【氏名】
依頼があった時点で分かっていることでしょうが、念の為に本人確認として免許証などの身分証明証を提示してもらうと良いでしょう。身分証明証が確認できれば、生年月日と住所も入手できるので時間短縮になります。
【生年月日】
ボディガードは、クライアントの無駄な露出を防ぐために代行で手続きや申し込み等をすることがあります。例えば、意識不明のクライアントを病院へ連れて行っとします。氏名、と年齢(生年月日)は、必ず聞かれます。以上のことから、生年月日は知っておく必要があります。
【血液型】
クライアントが事故で輸血が必要になったとします。もちろん、分からなければ病院で確認してもらえるでしょうが、ボディガードがあらかじめ知っていれば、タイムロスなくすぐに処置を開始してもらえます。また、ハイリスクの国へ行く際などは、万が一のことを考え、輸血用の血液を事前に用意しておくこともあります。日本人は、ほぼ自分の血液型を知っていますが、欧米では血液型検査をしない人も多く、自分の血液型を知らない人も少なくありません。もしクライアントが自分の血液型が分からない場合には、そのことで生じるリスクをあらかじめ説明し同意を得ておくべきです。
【身長+体重+靴のサイズ】
それほど多くはありませんが、身長や体重の制限がある場所も存在します。生年月日や血液型ほど重要ではありませんが、知っておくと何かと便利です。私の体験談ですが、先着警護としてフィジーに訪れた際、伝統衣装のブラシャツをクライアントにプレゼントしたいフィジー政府の担当者からクライアントの背格好を聞かれたことがあります。講演をする際の演壇の高さを設定するためにクライアントの身長を聞かれたこともありました。他にも、湿地帯で下がぬかるんだジャングルを訪れる機会があり、クライアント用に長靴を用意するために靴のサイズを聞かれたこともあります。色々な国や場所に行くようなクライアントの場合には、身長、体重、靴のサイズを知っておいたほうが何かと便利です。
【職業+役職】
家族以外でクライアントとの接触がもっとも多いのは同僚という人がほとんどではないでしょうか。クライアントが、必ずしも会社や組織のトップであるとは限りませんし、クライアントの中には、同僚に警護を付けていることを知られたくない人もいるかもしれません。ですから、ボディガードはクライアントの職業や役職に配慮した警護のスタイルも考える必要があります。
【自宅住所】
警護上のバルネラビリティ(Vulnerability)(脆弱性、欠点)が自宅だというのは常識です。どんな人でも必ずどこかのポイントで自宅へと帰ります。襲撃者は、ターゲットの自宅付近で待っていれば獲物が勝手に来てくれるのですから、これ以上襲いやすい場所はありません。そのため、ボディガードは、少しでも早くその場所を知り、警護プランを練りたいと思うものです。
※日本では、Vulnerabilityという単語はまだ一般的ではありませんが、警備業界ではよく使う言葉なんで国際レベルで警備や警護をしたいと思っている方は覚えておいてください。
【勤務先名+住所】
勤務先は、自宅の次にクライアントが最も訪れる場所です。自宅とほぼ同じ理由で、少しでも早くその場所を知りたいと思っています。そしてボディガードが、会社内へ入れるのかも確認しないといけません。事前に登録をしてIDを作っていないと入れない会社もあります。そういう場合は、警護が始まる前にIDを準備する必要があります。会社、もしくは会社が入るビルのポリシーで部外者(ボディガード)の入館を認めない場合には、クライアントと相談の上で対応を考える必要があります。
【家族構成】
クライアントの家族は、厳密にいえば警護対象者ではないかもしれません。しかし、クライアントが家族と一緒にいる場合には、家族も警護対象になりまとめて護らなければなりません。少なくとも家族の名前と顔ぐらいは知っておくべきです。中には、今は一緒に住んでおらず、1年に1度しか会わないような子供がいたりする場合もあります。この存在を知らず、この子がクライアントに会い来た際に間違って追い返してしまったとします。セキュリティ的には特に問題のない行為ですが、ボディガードとしてはプロ失格です。クライアントに何かあった際の緊急連絡先を家族にしている人も多いですし、基本的な情報は入手しておくべきでしょう。
【アレルギー】
ちょっと痒くなる、ムズムズするぐらいの軽いアレルギー症状もありますが、重いものになれば死につながるものもあります。国連時代、重度のエビアレルギーを持っていた同僚がいました。クリスマティパーティに参加した彼は、他の人がエビを取ったトングを間違って使ってしまい、それが原因で呼吸困難になり病院へとすぐに運ばれたんですが命を落としてしまうとても悲しい事故がありました。
クライアントにアレルギーがあることが分かっていれば、エピペンを装備に加えるなどの対応も出来ます。食物にアレルギーがある場合には、先着警護はクライアントが食べるものにそのアレルギー食物が入っていないことを確認する必要があります。
※エピペンを装備に加える場合には、エピペンの正しい使い方も理解している必要があります。[公式エピペンサイト]
【持病+常用薬】
持病と常用薬も、分かっているのと分からないので、何かあったときの対処に差が出ます。常用薬に関しては、クライアントが忘れてしまったときの為に予備を持っているボディガードもいます。
【主治医+かかりつけの病院】
主治医やかかりつけの病院を知っていれば、何かあった際に主治医に連絡をして指示を仰ぐことも出来ますし、病院に運ぶにしてもかかりつけの病院を事前にしっていれば迷わずタイムロスを防ぐことが出来ます。
以上のこと以外でも、クライアントのボディガードへの希望や、居心地が悪く、その場から退きたい旨をボディガードへ伝えるサインなど、聞かなければいけないことや決めなければいけないことは沢山あります。詳細は弊社で開催しているセミナーやCCPS/CCPSWにご参加下さい。
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