Twitterでリクエストを頂きましたので、本日は民間機におけるボディガードの配置について書きたいと思います。ただ民間機におけるボディガードの配置は、ブログで全てを説明するには量が膨大になってしまい難しいので導入部分のみとなります。詳しくは、セミナーやCCPS/CCPSWでお話します。
私が警護のキャリアを積んだ国連本部の警護チームは、海外へ行く際には専用機を使用して民間機は使わないと思われがちです。確かに専用機を使用することもありますが、約8割の海外出張で民間機を利用していました。
専用機の場合には、機内には身元が完全に分かった人しかいないので、ボディガードもシーティングアレンジメント等に悩むことはほぼありません。しかし、一般の方も多く搭乗される民間機の場合のシーティングアレンジメントでは慎重になります。
海外までボディガードを同行させるクライアントであれば、金銭的にそれなりに余裕がありファーストクラス、もしくはビジネスクラスに席を取ると思われます。国連ではVがファーストクラスやビジネスクラスに乗る際には、最低でもチームリーダーはVと同じクラスに席を取るルールになっています。Vがファーストクラスもしくはビジネスクラスで、ボディガードがエコノミーとなると警護がかなり大変になります。問題は機内だけでなく、搭乗する前にもあります。ファーストやビジネスの客は利用できるラウンジがエコノミークラスのチケットでは利用できませんし、入ることも許されていません(ラウンジパスを購入するか、交渉次第で入れてもらえる可能性もありますが、やはりVと同じクラスのチケットを取ることで警護をする上での問題回避になります)。ただ名前は伏せますが、世界中の誰でも知っているセレブリティで、自分はファーストクラスだけどボディガードはエコノミークラスという人も知っています。もしそのようなクライアントの場合には、事前調査と根回しがとても重要になります。
機内での席ですが、全ての要望や希望を叶えることは出来ないことを前提ですが、クライアントの希望や要望も一応聞く必要があります。セキュリティ上問題がなければ、そこはクライアントが少しでも機内で気持ちよく過ごせるために希望や要望をかなえてあげることも重要です。
利用する航空会社や機体によって異なりますが、ファーストクラスやビジネスクラスの場合は、A、通路、D、G、通路、Kといった感じに両脇が1席の場合のシーティングアレンジメントは他に比べて比較的に楽です。ANAのボーイング777-3000ERなどが、このタイプの席順です。
【図1のタイプでファーストクラスに席を取った場合】
私ならクライアントを1Kにボディガードを2Kに座らせます。1Aではなく、1Kを選んだのは、A側にはトイレがあり人の流れがKに比べて多いとおもったからです。トイレの順番を待つ人も通常はトイレに近い方に立っているので、やはり人がたまるとすればA側が多くなると思われます。
【図2のタイプでビジネスクラスに席を取った場合】
リスクが低いが、顔を良く知られるクライアントの場合には、クライアントを5Kに座らせ、ボディガードは6Kに座らせます。AではなくKを選んだのは、ファーストクラスの際と同じ理由からです。
顔が知られていないクライアントの場合には、クライアントを7Kもしくは7Aに座らせ、ボディガードはその後ろの席に座れば良いと思います。
※図2のANAのボーイング787-9のように両側の席は1席だが、窓席と通路席がある場合には、クライアントは通路から見えにくい窓席に座らせたいのでクライアントを1Aに、そしてボディガードは2Aに座らせます。トイレと同じサイドなのは少し気になりますが、クライアントを1Hに座らせてしまうと、ボディガードは窓側の2Kになってしまい反応が遅れる原因にもなりうるので、やはり1Hよりは1Aが好ましいと思われます。
なおボディガードをクライアントの席のすぐ後ろにしているのは、後ろの席の人間がクライアントの席を押したり、蹴ったりするのを防ぐ目的もありますし、クライアントを先頭の席にしている場合は、襲われるとしたら後ろからなのでその際にいち早く反応が出来るためです。
JALのシートマップは見にくいのでANAのエアバスA380-800のプレミアムエコノミークラスを利用して説明しますが、JALや国外の航空会社ではビジネスクラスでも図3のような席、席、通路、席、席、(席)、通路、席、席という設定が結構あります。こういった場合には更に大変になります。
ここで問題になるのがクライアントの横の席をどうするかです。空席を約束してもらえるのなら、それがベストです。しかし、それが出来ない場合には、秘書などが同行していて同じクラスにいるのなら身元が分かっているその人をクライアントの横の席に座らせます。それも出来ない場合には、ボディガード自身が横に座ることも考えないといけないかもしれません。
クライアントの横の席が身元が確かな同行者の場合、ボディガードの席は窓側に座るクライアントの真後ろの席ではなく、何かあった際にすぐに出れる通路側の席を選びます。クライアントの真後ろの席の人間がクライアントの席を蹴ったり押したりしても同じ列にいるので注意などの対応がすぐに出来るので、この場合は真後ろの席には座りません。
飛行機の出入り口を気にする人がいるかと思いますが、そこは一番最後の客として搭乗、そして到着後は一番最初に降りることでリスクの軽減が出来ます。
このように民間機におかえるボディガードの配置も、他と同じでその場で起こりえる全てのリスクを考慮したうえで最適な席決めをする必要があります。
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