ボディガードとUAS

ボディガードが進歩するテクノロジーに頼りすぎるのは危険ですが、新しい技術を学ばないこともまた危険です。日本でも2022年から国が認証するドローンの操縦ライセンス(免許)が新設されることもあり、ドローンは今後伸びていくと注目される産業の1つです。そのドローン等のUnmanned Aircraft Systems (UAS) / Unmanned Aerial Vehicle (UAV)(小型無人機)ですが、テロリストなどの襲撃者が偵察や襲撃に利用した事件が世界中で既に何件も起きています。日本でも2015年に総理大臣官邸の屋上に放射性物質を搭載したUASが落下した事件がありました。ドローンを使った襲撃で最も有名なのは、2018年に南米ベネズエラの首都カラカスで行われていた軍事パレードの際中にC-4(プラスチック爆弾)を搭載した2機のUASがニコラス・マドゥロ・モロス大統領を襲撃した事件だと思います。他にもドローン関連の事故や事件は数多く起きています。こうした状況から、ボディガードはドローン等のUASによる襲撃への対策の構築が重要となっています。

(動画引用元:CNN)

UAS対策で最も効果があるのは、前述のベネズエラの事件の際にも軍が利用していたAnti-Drone SystemCounter UAS systemと呼ばれる強力なマイクロ波を飛ばしUASの回路の妨害をするElectronic Jamming Deviceなどです。しかし、多くの国で、このようなシステムは、政府機関での使用しか許可されておらず、民間でこのようなシステムを使用することは出来ません。私も詳しくないのですが、Jamming Deviceにも強いセプテントリオ社の高度なRF干渉モニタリング・低減システム(AIM+)を採用したAsteRx4を組み込んだJam Proofing Dronesなども存在するようなので、UAS対策にはJamming Deviceさえあれば十分だというわけではありません。海外だとJamming Deviceの他にも、Stress Ball Cannons, Streamer CannonsScalable Effect Net WarheadといったUAS対策に利用できる道具も開発されていますが、どれも厳しい法が敷かれる日本で民間警備会社が使用することは困難です。

ただし、だからと言ってボディガードは、UASの対応に振り回される必要はありません。予期していないドローン等のUASに遭遇した際の対応などをまとめたポリシーの作成は必須です。しかし、これまでも何度も書いている通りボディガードの主な仕事はクライアントの身の安全を護る「Protective」なファンクションなので、UASの対応は「Projective」なファンクションを持つ警備に任せます。前述のベネズエラのケースで、なぜ大統領の警護たちがすぐに大統領を安全な場所に避難させなかったのかは謎ですが、防弾盾を手に大統領の周りをがっちり固めて護っていました。Jamming Device等が利用できない民間警備は、もしクライアントがイベント等で屋外に長時間滞在するような場合には出来るかぎりUASが飛行するのに難しい環境を作ったり、そういった場所を選ぶようにします。

ここまではUASに対してのカウンターメジャー(対応策)について書いてきましたが、UASは警備でも利用されています。日本でも業界最大手のセコムは、2015年よりドローンによる監視サービスを開始しています。これは、施設に設置したセンサーが車や人を検知するとドローンが対象物に近づき撮影し、情報をコントロールセンターへと送信するというものです。他にもドローンを利用した外壁点検のサービスを提供している警備会社もあるようです。ALSOKも、完全自立飛行ドローン警備システムの実用化を目指しているようです。このようにUASは、日本でも既に施設警備(1号警備)では活躍しています。ただ、残念ながらまだ警護(4号警備)でUASを上手に活用しているという話は聞いたことがありません。UASは、以前「ハイグランドの優位性」でも書いたとおり、高いところから全体が見渡せることはボディガードとって有益なことばかりです。アドバンスの際に上空から建物全体、そして周囲を見渡すことで、平面から見ただけでは気がつくことができないヴァルネラビリティを見つけることも出来ます。ルート・サーベイでも同じように活用することが可能です。操縦士の腕にもよりますが、カウンターサーベイランスにも活用が出来るはずです。

こうしたことからドローンの操縦技術は、今後ボディガードをしていく上で必ず役立つ技術の1つです。そしてこうした技術を習得することで、他との差別化にもなり、海外で仕事を得ようとする際にも必ずプラスになります。私も2022年にドローンの操縦ライセンスが開始され次第、取得しようと思っています。因みにアメリカでは、UASを操縦するにはFederal Aviation Administration (FAA)(連邦航空局)が制定するSmall UAS Rule (Part 107)というルールがあり、Remote Pilot Certificateという資格を取得する必要があります。既にアメリカ在住で、ボディガードを目指されている方がいましたらこちらの資格を取得したら良いかと思います。


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