Edmunds.comのデーターによるとアメリカでのマニュアル・トランスミッション車(以下「MT車」)の販売台数は全体の約3%だということです。日本はアメリカよりも更にAT車のマーケットシェア率が高く、日本自動車販売協会連合によると2019年に日本で販売された国産乗用車の98.6%がオートマティック車(以下「AT車」)だそうです。つまり、2019年度に日本で販売されたMT車の割合は僅か1.4%だったということになります。
日本では、1991年11月1日に、AT限定免許が創設されて以来、AT限定免許を取得する人の数が年々増加し、今ではMT車も運転が出来る普通免許を取得する人よりも圧倒的にAT限定免許を取得する人の数が多くなっています。警察庁の「運転免許統計」によると令和2年度の新規普通免許取得者数は1,169,249名で、そのうち約70%にあたる804,956名がAT限定免許でした。AT車のシェア率、AT限定免許取得者数共に、しっかりとMT車離れが反映されています。
以前、「ボディガードの車選び」で、最近は日本だけでなく海外でも警護車には両手がMT車よりも自由が利くAT車が好まれる傾向にあると書きました。日本やアメリカだけで、ボディガードをするのであれば、AT限定免許でも特に問題を感じることはないと思います。(※アメリカには「AT限定免許」は存在しません。AT車で試験を受けても、MT車で試験を受けても同じ免許になります。つまり普通免許を持っていれば、たとえMT車の運転経験がなくても、法的には問題なく乗ることが可能です)。こうしたことからボディガードには興味があるが、海外には行く気がない人はAT限定免許でも特に不自由を感じることはないでしょう。私はMT車も運転出来ますが、約10年の警護経験でMT車を運転しないといけなかったことは、片手で数える程度でした。日本に帰国してから短期間働かせてもらった職場で4号警備をしているという人と話をした際には、免許すら持っていない人が複数いて驚いたこともあります。ボディガードになりたいという人は、AT限定免許でも良いので、運転免許は絶対条件です。
ただもう少し上のレベルを目指すのなら、MT車も運転出来るようにしておいた方が良いでしょう。米自動車メーカーのフォード社によると、ヨーロッパでも近年はかなりAT車の販売数が伸びているようです。しかし、それでもEdmunds.comの調査で、依然ヨーロッパで販売された車の約80%以上がMT車と言う結果が出ています。
ヨーロッパの多くの国では、環境問題に敏感で排気ガス対策等で車の台数を制限することを目的に自動車税がアメリカや日本に比べて高く設定されているそうです。そのため、車の維持費を抑えようと、ヨーロッパの国々では燃費が良いMT車を好む人が多い傾向にあります。シェア率が高いMT車は、修理などをする場合でも部品が充実していますし、値段もAT車より安く済むようです。これらがヨーロッパで依然としてMT車の市場シェア率が高い理由だと言われています。
ヨーロッパの国に旅行に行かれたことがある人は、レンタカー店の車が9割方MT車で、ようやく見つかったAT車はMT車の倍の金額なんていうことを経験しているのではないでしょうか。以前、アイスランドでアドバンスをした際にレンタカーをしたと書きましたが、この時の車もMT車でした。時間に余裕があれば、AT車を見つけることも出来たとは思いますが、レンタカーをするとは思っておらず、突発的な事態でとにかく足が必要だったので、すぐに借りられる安い車をお願いしたところ、MT車が出て来ました。MT車が運転出来なければ、このような予想外の事態の際に対応が遅れてしまいます。
ドイツ、フランス、イギリス、デンマーク、スウェーデンなども、市場ではMT車が大半を占めていますが、これらの国では、警護車にはAT車を利用していました。しかし、警護の訓練で行ったルーマニアで見た警護車は全てMT車でしたし、実際、訓練で使用した車両もすべてMT車でした。つまり、MT車が運転出来なければ、訓練すら受けることが出来なかったとうことです。
国連時代の同僚には、セスナ機の操縦が出来る者やジェット機まで運転出来てしまう者(彼は、その後カリビアン航空のパイロットに転職)もいました。さすがにそこまではなかなか難しいですが、MT車ぐらいならそれほど難しいものではないので、AT限定免許の方や免許をまだ取得していない方は考えてみてください。
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