金に物を言わせ、質より量でカバーするアメリカや中国のような超大国は、ホテルを丸ごと貸切ってしまうので部屋決めなどで悩むことはほぼありません。実際、大阪で開催されたG20でもアメリカと中国はホテルを丸ごと貸切っていました。ちなみに国連は、南アフリカの大統領とサウジアラビアの皇太子と同じホテルに宿泊しました。
しかし、なかなかそのようなクライアントの警護をする機会はありません。クライアントが金銭的にVIP専用の特別なフロア、特別な部屋に泊まる余裕がない場合には、ホテルのフロアマップを入手して警備観点からクライアントに最適なフロアと部屋、ボディガードの部屋の配置を決める必要があります。
クライアントの部屋は、人がたまりやすいエレベーターや自販機付近でない方が好ましいです。避難のことを考え、避難ドアのすぐ近くを選ぶ人がいますが、これもあまり良くありません。日本のホテルはRe-Entryが出来る避難ドアが多くあります。つまり、避難階段や避難ドアを使って他のフロアからのアクセスが可能ということです。電子鍵制御の避難ドアなら非常時以外で外や他の階から非常階段を使ってのアクセスはないので、非常ドアの近くでも良いという意見もあります。しかし、電子錠等の電子機器は100%ではありませんし、非常ドアのすぐ傍の部屋は避けたいところです。なおカードキー併用の電子錠制御の非常ドアであれば、このカードもボディガードは入手しておき、いつでもアクセスが出来るようにしておく必要があります。カードキーではなく、ホテルの警備室から非常ドアの制御をしているようであれば、ホテルの警備と事前の打ち合わせをしておくことも必要となります。
クライアントと常に行動を共にするPPOの部屋は、クライアントの部屋の隣の部屋が最も好ましいです。VIP用の特別な部屋なら9割9分、クライアントの部屋とボディガードが泊まる部屋が中でつながっています。そのような特別な部屋でなくても、通常階にも家族が2部屋を利用する際に好まれる中がドアでつながっている部屋があるので、こちらを選ぶことをオススメします。中のドアは閉めたままで良いですが、鍵は外しておかなければなりません。そしてその旨をクライアントに伝えるのも忘れてはいけません。何があった際、クライアントが部屋の外に出ることなくボディガードに助けを求めることが出来ますし、逆にボディガードも外に出ずにクライアントにアクセスが出来ます。
国連時代は、クライアントの部屋の上と下の階の部屋の宿泊者の素性、そしてクライアントが宿泊する部屋があるフロアに他の宿泊客がいる際も大まかな素性まで調査していました。ホテル側は、宿泊客の情報を漏らすことは出来ませんので、民間の警護でここまですることは出来ませんが、そこまで調べる警護もあるということは頭の片隅に入れておいてください。
部屋の鍵ですが、クライアントの部屋の鍵はボディガードが管理をして、クライアントには持たせません。テレビで小泉純一郎元総理大臣の息子でタレントの小泉孝太郎さんが、自宅は警察が警備していたため一人暮らしをするまで家の鍵は持ったことがなかったと話をしていましたが、ボディガードは基本VIPやその家族に自宅やホテルの鍵を持たせることはしません。これは、アクセスコントロールをする上でとても重要なことです。
クライアントの留守中に、ベットメイキングなどでホテルのハウスキーパーが部屋に入る際には勝手に入ることがないように事前にホテル担当者に伝えます。ベットメイキング等が必要な際は、ボディガードが連絡をした際に警備/警護の監視の下お願いすることになります。
フィジカルキーの場合には難しいかもしれませんが、最近のホテルはカードキーのところがほとんどです。カードキーの場合には、いくらでもカードを作ってもらうことが可能なのでボディガードのチームメイト1人1人がクライアントの部屋の鍵を持てるように事前にホテルにボディガード分の枚数でカードキーを作るお願いをしておく必要があります。
ボディガードの人数にもよりますが、PPO以外のボディガードの部屋はクライアントの部屋から近い非常ドアの近くに1部屋、そしてエレベーターロビー付近に1部屋といった感じでどこから襲撃があっても対応が可能なように配置します。特にハイリスクの国では、事前に万が一の事態が発生した際の各自の役割を取り決めておく必要があります。
クライアントにもよりますが、私のクライアントには以前、電話は一度秘書を通してからという人がいました。その場合には、ホテル側には、クライアントへの電話は全て秘書の部屋の電話につながるように設定をお願いする必要があります。
クライアントの到着日には、事前に部屋のセキュリティチェックをします。国連の場合には、可能であればK9(爆弾探知犬)によるチェック、そして警護員による調査をします。調査が終わった部屋には、ホテル側の人間も入らないように伝え、警備/警護に人数の余裕があれば、部屋の前に警備をつけ誰も入らないようにします。
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