ホテル・サーベイ(1)

アドバンス(先着警護、先遣隊)は、クライアントが宿泊するホテルの事前調査も行います。英語で、このことを「ホテル・サーベイ(Hotel Survey)」とか「ホテル・アドバンス(Hotel Advance)」と呼びます。

ホテルは、クライアントが1日の終わりに向かう場所で、出先で一番襲われるリスクが高いため、調査項目がレストランやその他一時的に滞在する場所よりも多くなります。ホテル選びの段階で、ボディガードに意見を求めてくれるクライアントだとアドバンスもしやすくなります。ちなみに国連の場合は、国別に警備・警護上の観点から、警護対象者が宿泊するのに問題がないホテルのリストが存在し、警護対象者は、そのリストの中から希望のホテルを選ぶ形になっていました。もちろん、既に事前調査済みのホテルでも、警護対象者が泊まることが決定した時点で改めてアドバンスをします。ここだけの話ですが、私が帰国後一時的に働かせてもらった東京のラグジュアリーホテルは、リストに入っていませんでした。リストに入らなかったのは、国連警備隊のセキュリティガイドラインの基準を満たしたVIP用の入り口が用意されていなかったのが原因でした。詳細を知りたい方は、セミナーやコースの際にこっそり聞いてください。

当然のことですが、まずはホテルの名前と住所を確認します。こういう基本をおろそかにすると恥をかくことになります。警護チームに配属されたばかりのころ、きちんとホテルの名前を確認せずにアドバンスに向かったら、偶然とても似た名前のホテル(同系列のホテル)が同じ街にふたつ、しかも車で5分ほどの距離にあったために運悪く間違ったホテルの方に向かってしまったことがあります。シンプルなことですが、予約確認のメールのコピーなどを入手して、正しいホテルの名前と住所の確認することが大切です。

ホテルの名前、住所、そして連絡先(電話番号、Eメール、FAXなど)、予約確認番号を入手したら、実際にホテルに行く前に連絡をして担当者にアポイントメントを取っておくと親切ですし、時間の無駄がないと思います。機密保持のためにホテルには連絡をせずにアドバンスをするべきだと思っている方が時々いますが、これは大きな間違いです。機密保持も確かに重要ですが、ホテル側のサポートなしには、スムーズに警護をすることはとても難しくなります。それなりのレベルのホテルになれば、従業員がSNSなどに情報を漏らすようなこともないと信じています。

クライアントの部屋ですが、警護の教科書では火事になったことを考えて消防のハシゴ車のハシゴがとどく階層に取るべきだと言われています。しかし、現実的にはVIP用の部屋はハシゴが届かないホテルの最上階などにあることが多いので、そういった部屋を利用する場合は、過去に火災があったかをホテル側に確認し、防災設備の確認、最寄りの消防署のレスポンスタイムの確認などを行います。VIP対応になれたホテル、日本でいうと帝国ホテルなどのVIP用の部屋は警護のことも考えてデザインされており、火災の際に避難に困る高層階というリスクを差し引いても、(金額はそれなりにしますが)警護はかなり楽です。ハイリスクのクライアントの場合には、ホテルの部屋に戻り朝まで外出の予定がない夜の間は勿論のこと、クライアントが部屋にいないときでさえも警備は続きます。クライアントの部屋の前の通路に椅子を用意して不審者がクライアントの部屋に近づかないように警戒します。帝国ホテルのような警護を連れたVIPの対応になれたホテルになると、通路にずっと警護官がいても従業員も他のお客も慣れていて驚きませんし、警護官が待つスペースも確保されています。

ホテル・サーベイ(2)では、VIPの部屋選びとボディガードの配置について、そしてホテル・サーベイ(3)、(4)では実際にホテルで行う調項目について紹介したいと思います。


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