海外の資格⑫ Process Server

就労ビザの関係で短期間ではあったものの国連本部警備隊(UNDSS)に入職する前に、Process Serverとして雇われていたことがあります。日本では耳にすることがない「プロセス・サーバー」という仕事ですが、アメリカでも意外に知っている人が少ない仕事です。その名からIT関連の仕事に間違われることも多いのですが、実際はITと好対照に超アナログの仕事です。

プロセス・サーバーの主な仕事は、SubpoenasSummonsといったLegal Documents(法的文書)を原告、被告、そして証人に届けることです。因みにSubpoenasとSummonsは、日本語訳では共に「召喚状」と訳されますが、Subpoenasは証拠提出が目当ての召喚状で、 それに対してSummonsは裁判への出廷命令となります。プロセス・サーバーは、Legal Documentを届けた後に「Affidavit of Service」と呼ばれるLegal Documentを被告に渡したことを証明するために(受取人の名前、性別、人種、肌の色、髪の色、年齢等を明記した)書類を裁判所書記官に提出します。Legal Documentを受け取った被告は、ニューヨーク州では通常20日以内に裁判所になんらかの返答をすることが義務づけられています。

なお、ニューヨーク州でプロセス・サーバーの仕事を年間通じて5件以上する場合にはライセンスの取得が法律で義務づけられています。他州は分かりませんがニューヨーク州の場合、ライセンスと言っても試験はなく、取得の条件も18歳以上という年齢制限くらいしかないので、Department of Consumer Affairsに申し込むだけ取得が可能です。

NYCのプロセスサーバーライセンス

ニューヨーク州は、他州に比べてそこまで厳しい制限が設けられていませんが、それでもプロセス・サーバーには文書を届ける際にいくつかのルールが定められています。例えば、祝日や日曜日、または宗教上守られた日には文書を届けてはいけないと決められています。たとえば、被告がユダヤ人、もしくはイスラム教徒の場合には、宗教上の安息日である土曜日には文書を届けることが出来ません。こうした法律で定められているルールが守られなかった場合や期限までにきちんと文書が届けられなかった場合は、裁判自体が無効になってしまうこともあります。

文書を無駄なく期限までに余裕をもって届けるためには、入念な下調べが必要になります。 プロセス・サーバーになりたての頃は、計画も立てずに文書に記載されている住所に行けば、すぐに文書を手渡すことが可能だと思っていました。しかし、大抵の場合、被告人が日中に文書にある住所にいることは少なく、かなり無駄な時間を費やしていました。プロセス・サーバーの給料は、歩合制のことが多く、数がこなせないプロセス・サーバーは稼げません。やっとの思いで被告を見つけても文書を受け取ってもらえないこともあります。そうした場合には、どうしたら文書をすんなり受け取ってもらえるのかも考えなければなりません。プロセス・サーバー時代の同僚には、観光客を装い、被告の前でわざとカバンから文書を落とし、被告に拾わせるなんていうテクニックを駆使したなんていう人もいました。

短期間ではあったものの、プロセス・サーバーとしての経験は、のちのボディガード人生でもかなり役立ちました。Ox-walk Tacticsの記事で書いたように、経験なしでいきなりボディガードになることは難しいです。教養を養うためにも、とりあえず今出来ることはどんどん挑戦していくことがとても大切です。あまり関係がないと思っていることでも、考え方や見方を変えてみると意外にどこかで役立つものです。


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