ALSOK全国大会を視聴した感想

本日は、CBC制作で2020年12月13日(日)にTBS系列で放送された「BACKSTGE(バックステージ)」で取り上げられたALSOKの全国大会についていくつか思うところがあったので個人的な見解を書きたいと思います。

2010年10月に愛知県名古屋市で行われた国連と外務省共済の会議、生物多様性条約第10回条約会議(COP10)で、約一ヶ月ほど愛知県警とALSOKと協力し警備を担当しました。COP10で一緒に働いたALSOKの方たちとは今でも時々連絡を取り会う仲ですし、東京本社にも行ったことがあります。しかし、それでもALSOKが毎年、このような全国大会を開催していることは知りませんでした。

全国にいる約3万7000人以上の社員の技術向上のための大会ということですが、このような取り組みは本当に素晴らしいと思います。

競技内容は;(1)電話対応マナーコンテスト、(2)感染症対策 消毒要領、(3)G7模擬折衝、(4)発報検索要領、(5)技術業務、(6)資金現金整理作業、(7)無人航空機操縦要領、(8)GC警報対応要領、(9)手荷物検査、(10)語学対応、(11)駐車場マナーアップコンテストの11種らしいです。

今回の放送では取り上げられませんでしたが、個人的には;(2)感染症対策 消毒要領と(7)無人航空機操縦要領に興味があります。大手警備会社だからといってそのステータスにおごることなく、その時代に合ったサービスをタイムリーで取り入れる姿勢はさすがです。

(7)の無人航空機というのはドローンのことです。ALSOKは他機関とも協力しドローンを実用化させていて、このフィールドでは先駆者的な存在です。機械には疎い私ですが、いつか機会があれば、学びたいと思っています。

(2)感染症対策に関しては、ペニンシュラ東京の警備部で指揮を執っている際に、当時はまだHygiene Managerというポジションがなかったため、私が一時的に兼任していました(※現在は、Hygieneにとても詳しい専門家がそのポジションに就いています)。従業員に陽性が出たため一定期間自主閉鎖をしていたホテルが再開に際し制作した感染症関連のポリシーや対応マニュアルに深く関わっていましたし、サーマルカメラの設置に関しては私に一任されていました。ペニンシュラ東京にいたのは僅か4ヶ月でしたが、Hygieneについて医師から話を聞いたり、国内外を問わず数多くの資料を読んだりして勉強したので、ALSOKがどのようなことに注目しているのかとても気になります。

今回バックステージで取り上げられたのは、(4)発砲検索要領と(9)手荷物検査の2種でした。

この2種に関しては、経験が少ない入社間もない社員が参加したということを考慮しても、指導者の考え方や技術的な面でもいくつか疑問が残る内容でした。

以下は「発報検査要領」で気になった点です。

(画像引用元; TBS BACKSTAGEより)

指導員の方が「自分が1番ケガをしてはいけないので気迫で相手を逃がす」と発言しているのですが、警備員の安全第一で、逃がすことが大前提ならむしろ入館しない方が良いと感じるのは私だけでしょうか。もちろん、わざわざ己の身の危険が及ぶことをしたいと思う人はいませんし、警備員にそこまで求めるのは酷な気もします。ただ、仕事中に負傷することは勿論、命を落とすこともあり得るという覚悟で仕事をしていた私としては、そういった心構えを持った警備員がどれ程いるのか気になるところです。

ALSOK 1
(画像引用元; TBS BACKSTAGEより)

同じ指導員の方が、「目で犯人の人相・着衣を記憶する」とも発言していました。プライバシー関連の法律が関係しているのだとは思いますが、アメリカの警察も使用するボディカムを使用してはいけないのでしょうか。クライアントが不在時でも業務上、家の中へと入ることもある仕事なので、のちのち窃盗やその他の疑いをかけられないためにもボディカムの導入は早くした方が良いと思います。ボディカムを装着していれば、人相・着衣も録画でき、警察が捜査する際の重要な証拠にもなりえます。

(画像引用元; TBS BACKSTAGEより)

テレビの中では警報の発報があった家の前に到着後に警備員が「住居に入る前に住人に許可をもらう(入館前連絡)」とありましたが、発報があった時点でディスパッチからクライアントへすぐに連絡を入れた方が効率的だと思いました。この点に限らず、警備員が現場でこなさないといけないことがあり過ぎて、結果モタモタしているイメージを受けました。

(画像引用元; TBS BACKSTAGEより)

住人への入館連絡の際、留守の際は「留守電→ポイントアップ」とありました。留守でも入館するのなら、契約時に留守時の入館についてしっかり取り決めをすることで、ここでも無駄な時間を省くことが出来るのではないかと感じました。

(画像引用元; TBS BACKSTAGEより)

発報検査を終えた大会参加者の方が「緊張して飛んでしまいました」とコメントしていましたが、「飛ぶ」ということはセリフか何かを記憶してそれに沿って動かないといけないということなのでしょうか。決まったセリフをきちんと言えるかを競う大会では、警備員の技術向上にはつながらないと思います。もちろん、この大会の参加者には経験が浅い社員が多いようなので、対処方法が考えなくても自然に出るようにはまだなっていないのだということは理解しています。しかし、このようなマニュアル暗記型で訓練をしてしまうと、警備員が考えるという行動をしなくなり、マニュアルにないようなことに遭遇した際に対応が出来なくなってしまう危険性を含んでいます。

その後の参加者が、慎重になりすぎ住人へ報告が遅れることでタイムアップになってしまったとありました。現場にかけつけた隊員の判断を尊重するのであれば、経験から得た特殊な感覚で何かまだあると思った際には慎重になることは決して間違いではありません。競技上、ルールを設け、時間制限を作ることは仕方がないのかもしれませんが、現場でもとにかく早く確認を済ませることばかり考えるようになってしまったら危険だと感じました。

以下は「手荷物検査」で気になった点です。

(画像引用元; TBS BACKSTAGEより)

指導員の方が「警備員たちが最高のおもてなしをしてくれたら…」という発言をされていました。丁寧に仕事をこなすことと「おもてなし」はイコールではないと私は思っています。日本のおもてなし文化は世界に誇れる素晴らしい文化ですが、警備で必要なのでしょうか。検査を受ける側も、警備員からおもてなしを受けようなんて思っていません。早く的確に検査を終わらせてくれると良いなとしか思っていない人がほとんどだと思います。

警備員の英語、グローバル化により世界が以前よりも近くなり、日本語が話せない人への対応も珍しくなくなってきています。英語を競技に入れること事態は、素晴らしいと思います。しかし、英語が思うように話せなくて、身振り手振りで対応した女性警備員に対してスタジオでもバカにした笑いをしていましたが、これは大きな間違いです。言語は、日本語と英語の2つしかないわけではありません。日本語も英語も話せない人への対応の際は、身振り手振りで対応するしかないこともあります。英語が出なかった際に、一生懸命考えて、彼女なりに身振り手振りで意思の疎通を試みたこの女性警備員の行動は褒めるべきです。

杖なしでは歩行困難な方や車椅子の方への対応で、男性客相手に女性警備員が対応をしていましたが、日本ではOKでもグローバルスタンダードではアウトです。男性警備員がいるのに、なぜ交換せずに女性警備員が男性客の身体に触れて所持品検査をしているのでしょうか。相手が男性なら女性でもよいという認識だとしたら、ハッキリ言って時代錯誤の考えです。日本では、公衆トイレ等の清掃でも男性トイレの清掃を女性清掃員がしていますが、日本に来た外国の人はこれにかなり驚いています。身体に触れるような所持品今朝検査対応や、障害がある方に対して身体を支えるなど身体に触れてのサポートは同性の警備員に対応させるべきです。これは、警備員が客からセクシャルハラスメントを受ける被害の軽減にもつながります。

ぱっと観ただけでもこんなに疑問点が出てきてしまうのは、おそらく社内のみで大会を主催してるため、考えが偏っているせいではないかと思います。せっかくの素晴らしい取り組みなのに、これでは勿体ないです。大会の審査員や実行委員会に社外の人間を入れることで客観的な意見を取り入れるだけで飛躍的に発展するのではないでしょうか。ぜひ、社員にとっても会社にとっても、さらに言えば警備業界にとって、より有益な大会にして頂けたらと思っています。


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