車両チェックの欠落が突きつける日本のセキュリティ課題

施設のセキュリティを語るとき、多くの企業は高額な監視システムや堅牢なフェンスといった設備面に注目しがちです。しかし、どれだけ立派な設備を導入しても、最初の入口での基本的なチェックが行われなければ、セキュリティは本来の力を発揮できません。特に見落とされやすいのが、車両入館時のチェックです。

筆者が勤務していたニューヨーク国連本部では、施設に入る全ての車両が何らかの検査を受けます。職員の車であっても例外はなく、トラックや大型車両は警備犬による爆発物検査が義務付けられ、荷台や車体下部まで丁寧に確認されます。VIP車両の場合は、専属警護が常時監視するため一般車両と同じチェックは行われませんが、ゲートによっては地面に埋め込まれたカメラで車体下部を撮影し、不審物が取り付けられていないかを確認します。ここで重要なのは、信頼の有無にかかわらず、リスクに応じて必ず何らかの手法でチェックが行われているという点です。国連本部では、チェックは信頼を損なうものではなく、リスクマネジメントの当然の手順として定着しています。

一方、日本の企業施設では、大きな違いが目立ちます。警備員がゲートに立ってはいるものの、その役割は来訪者の名前や会社名を確認して入館バッジを渡す程度であり、車両の窓を開けさせて内部を確認したり、トランクを開けさせたり、車体の周囲を歩いて異常がないか目視する、といったチェックはほとんど行われていません。人や荷物を伴った不正な侵入の可能性はゼロではないにもかかわらず、入口での最も基本的なリスク排除の手順が欠落しているのです。

もちろん、日本の犯罪率を考えれば、こうしたチェックがなくても大きな問題は起きないかもしれません。しかし、だからといって高額なフェンスやセキュリティシステムの強化が正当化されるわけではありません。リスクに応じたバランスであれば、これらも不要であるはずです。にもかかわらず、多くの企業が大規模な設備投資を行うのは、日本国内のリスクに基づいてではなく、グローバル企業として統一されたセキュリティポリシーに従う必要があるからです。国内の状況に比べれば過剰ともいえる対策が、日本でもそのまま導入される結果、設備は充実している一方で、人による基本的なチェックが軽視される、アンバランスな状況が生まれます。

さらに重要なのは、車両チェックは単なる目視だけでは十分でないという点です。日本の警備員を海外の現場経験と比較すると、運転手や訪問者への声掛けに積極的でないケースが目立ちます。運転席や後部座席を確認するだけでなく、トランク内に大きな荷物が詰め込まれている場合には、運転手に「この荷物は何ですか」「どこに運ぶものですか」と尋ねることが重要です。このコミュニケーションにより、不正侵入や持ち込みのリスクを早期に察知できるだけでなく、警備員自身の注意力や判断力が高まり、運転手・訪問者への抑止効果も期待できます。

日本の現場においては、設備投資と同じくらい、あるいはそれ以上に、人による基本動作の徹底が求められます。特にグローバルポリシーに従う必要がある企業では、国内のリスクに比べて過剰な設備を導入せざるを得ない分、運用面の基本が疎かになりやすい。しかし、車両チェックとそれに伴う声掛けを徹底することで、グローバルポリシーとの整合性を保ちながら、日本の現実に即したバランスの良いセキュリティを構築することが可能です。FJ Protection Serviceは、このような基本動作を重視した運用こそ、真に実効性のあるリスク管理を実現する第一歩であると考えます。

※なお、車両チェックは要人警護でも不可欠な措置であり、オフィスビルや住居のセキュリティにおいても同様に徹底されるべきです。


入館前には、次の基本ポイントを必ず確認してください。

まず、運転席や助手席の窓越しに内部を目視し、同乗者が不審でないか、荷物や荷台に怪しい物がないかを確認します。次に後部座席の目視確認を行い、人が隠れていないか、荷物が異常に積まれていないかを確認します。可能な範囲でトランクを開けてもらい、不審人物が潜んでいないか、大きな荷物や異物がないかを確認してください。そして車両の周囲を一周し、車体下部やナンバープレート付近に不審物がないか、不自然な取り付け物や改造がないかを目視します。

これらのチェックに加え、必要に応じて運転手に声をかけ、荷物の内容や目的を確認することも重要です。「声をかける=監視されている」と意識させることで、不正行為や不審な行動を抑止できます。

チェック結果は簡易記録として残してください。日時、担当者、車両番号、特記事項を明記し、異常があった場合は即時管理者に報告します。数分で完了する簡易確認でありながら、設備だけでは防げないリスクを大幅に低減できます。

運用上の注意として、無理に窓を全開にしたり、トランクの詳細を確認する必要はありません。常にリスク意識を持ち、目視と声掛けを組み合わせて確認することが、セキュリティの基本であり、最も実効性の高い手順です。


🚨 FJ Protection Service 現場掲示用


1️⃣ 車内確認

  • 運転席・助手席:窓越しに内部を目視
    • 同乗者が不審でないか
    • 荷物や荷台に怪しい物がないか
  • 後部座席:人が隠れていないか、荷物が異常に積まれていないかを確認

2️⃣ トランク確認(可能な範囲で)

  • ☐不審人物が潜んでいないか
  • ☐大きな荷物や異物がないか目視
  • ☐必要に応じて運転手に質問
    • 「荷物の内容は?」
    • 「どこに運ぶものですか?」

3️⃣ 車両周囲の目視確認

  • ☐車体下部、ナンバープレート付近に異常物がないか
  • ☐不自然な取り付け物や改造がないか

4️⃣ 記録・報告

  • ☐チェック結果を簡易記録に残す
    • 日時、担当者、車両番号、特記事項を記載
  • ☐異常があれば即時管理者へ報告

⚠️ 運用上の注意

  • 無理に窓を全開にしたり、トランクの詳細を確認する必要はなし
  • 数分で完了する簡易確認で十分効果あり
  • 目視+声掛けでリスクを把握することが重要

💡 ポイント

  • 車両チェックは単なる目視だけではなく、運転手への声掛けも含めて実施
  • 不審物や不正行為の抑止に直結する基本行動
  • グローバルポリシーに沿った運用でも、日本の現場に合わせて無理なく実施可能

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