アドバンスの7つ道具

以前、ボディガードはベテランになるほど、業務をする上で本当に必要な装備をよく理解して無駄な物を携帯しなくなりますと書きました。(※ヒックの法則

しかし、アドバンス(先着警護)を担当する場合は少々状況が異なります。アドバンスに求められることは瞬時の判断よりも、入念の情報収集と根回しとなります。そのため、クライアントとずっと行動を共にするPPOとは異なり、アドバンスをする上で役立つ道具をいくつか持ち歩きます。タイトルには、「7つ道具」と書きましたが、今日はアドバンスをする上で持っていると便利なアイテムをいくつか紹介したいと思います。

テープ/ステッカー

調査済みの部屋のドアに貼っておけば、調査後の部屋に警備に付ける余裕がなくてもテープが破れていたら誰かが部屋に入ったのだと分かります。アドバンスがクライアントを先導できない場合には、チームメイトへの目印としても使うことが出来ます。テープの使い方は、他にもいろいろあり、持っておくととても便利です。ただし、よく流通している製品で他にもよく使われているテープだと勘違いのもととなる可能性もあるので、その際にはテープにチームメイトにしか分からないマークを書くなどの対策が必要となります。

ドアストッパー

100円ショップなどで購入が可能です。なくても問題はありませんが、あると意外に便利で役に立ちます。導線上にオートロックで閉めたら鍵が自動でかかってしまうドアがある場合、警備的に問題がないことを確認したうえでドアストッパーを挟んで鍵がかからないようにするといった使い方をしたりします。

サテライトフォン(衛星携帯電話)

国連時代、使っていた衛生携帯電話

東京やニューヨークなどの整備された都市では、使う機会はほぼありません。しかし、通信インフラが整っていない発展途上国やジャングルなどではコミュニケーションツールとして大変重宝されています。日本は、通常サテライトフォンなどの必要はありませんが、災害大国なため、前職では日本への出張の際、念のためにアドバンスはサテライトフォンもアドバンスキットの中に入れて持ってきていました。幸い日本は、被災直後の福島県南相馬町に行った時でさえ携帯電話が普通に使え、サテライトフォンでなければ連絡が取れないという事態におちいったことはありません。

盗聴器発見器

ホテル・サーベイ追記の項にも書きましたが、ワイヤータップの恐れがある場合には事前に調査をするべきです。ただ、プロが巧妙に仕掛けた盗聴器の発見は簡単でなく、発見できるかはオペレーターの腕次第なところがあります。

以下は、車でアドバンスをする際に車のトランクに積んでおくと役立つアイテムです。

トラフィックコーン+Cautionテープ

東京は、厳しい駐禁取締があるため、路上駐車によりクライアントを下す場所(ドロップオフサイト)や車両が待機する場所(ステージングサイト)で悩むことは少ないかと思います。しかし、世界にはニューヨークシティのような二重駐車(ダブルパーキング)のような違反駐車がひどく、ドロップオフサイトやステージングサイトで常に悩むのが普通という都市も少なくないのです。そのような場所では、先に現地に到着したアドバンスがスペースを見つけ次第トラフィックコーンを置き、必要であればコーションテープも使いスペースを確保します。何の実行力も持たないトラフィックコーンとコーションテープですが、これがとても効果があり、わざわざどけてまでそこに駐車しようとする人は、自由奔放な人が多い海外でも多くありません。

融雪剤+シャベル

私が主にボディガードのキャリアを積んだニューヨークでは、12月から2月の寒い日だと氷点下20度近くまで冷え込み、膝下あたりまで雪が積もることも珍しくありませんでした。そのため、冬場はアドバンスに限らず各車両のトランクに融雪剤とシャベルが積み込まれていました。融雪剤やシャベルは、フロリダや沖縄といった雪とは無縁の環境では必要がありません。ボディガードは、任務を行う地域のこと良く理解して、環境に適した道具を用意する必要があります。沖縄やフロリダのような直射日光が強くて暑い気候なら、クライアントやチームメイトがもし準備していなくても対応できるように、予備の日焼け止め、サングラス、帽子、タオル、塩飴などを用意しておくと役立つかもしれません。マラリアのリスクがある国では、感染源である蚊に効く虫よけスプレーなどを追加するとよいでしょう。COVID19(コロナ)のような感染症が流行っている場合には、予備のマスクやフェイスガード、ニトリルグローブ、消毒スプレー等も追加するとよいでしょう。

ジャンプスターター/ジャンプケーブル

これはボディガードでなくても一般的に言えることなのですが、出発前に万が一車が故障した際に使う道具を車に積んであるか確認することはとても重要です。それらの道具は定期的にメンテナンスをして、きちんと使用出来る状態にしておかなければなりません。ジャンプスターターは、他の車の助けを借りずにバッテリーをスタートさせることが出来ますが、肝心のジャンプスターターがきちんと充電されていなかったら使い物になりません。野球のイチロー選手は、グローブやバットを人には任せずに必ず自分で丁寧に手入れをしていたことが有名です。どんな業種であっても、プロと呼ばれる人は道具に愛情をもってきちんと手入れをします。

上記以外にも、アドバンスはメディカルキット、予備の携帯電話、無線器、パワーコンバーターなど、どんなシチュエーションでも対応できるよう色々なアイテムを準備する必要があります。

明日は、ホテルのアドバンスをする上で役立つアドバンスの道具を紹介したいと思います。


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