ウノ、ウノ、ウノ

2011年、当時の国連事務総長・潘基文氏の南アメリカツアーでは、コロンビアのカルタヘナのアドバンス、そしてその後はチームに同行し、ウルグアイの首都モンテビデオでは国連事務総長夫人の警護を担当しました。ウルグアイには、隣国アルゼンチンから入国したのですが、そこまでにもかなりゴタゴタがありました。その時のことは「ボディガードと自然災害」に書きましたので、ぜひそちらも併せてお読みください。

ウルグアイの先着は、警護チームに配属されたばかりの新人だったため、国連事務総長のプログラムの確認ばかりに一生懸命になってしまい夫人のプログラムまできちんとチェックが出来ていませんでした。モンテビデオでは、夫人のために事務総長と別のプログラムが用意されていました。そして夫人の移動用にとウルグアイ政府が車を用意していましたが、用意されていたのはセダン車1台のみでした。夫人にも現地の警察官が1名警護についていたのですが、車1台では著者と警護官が夫人の乗る車に同乗することは物理的に無理です(後部座席には、夫人とウルグアイ政府の案内役の人が乗っていました)。著者の任務は厳密言えば警護ではなく、セキュリティ・リエゾンだった為、もしもう一台車が用意されていれば、そちらの車に乗って後を追って移動することも可能でした。

著者も当時まだ警護官としての経験値があまりなく、苦渋の決断で結局現地の警護官には車から降りてもらい著者が夫人の車に同乗することにしました。実は密に現地の警護官なら、すぐに別の車を用意して追いかけてきてどこかのポイントで合流できるだろうと思っていたのですが、著者に車から降ろされたことに腹を立て、警護の任務から自主的に外れたと後になって聞きました。ウルグアイでは、夫人に対する脅威がほぼなかったため、現地の警護官がつかなくなってしまったことで色々不便はあったものの、そこまで問題はありませんでした。唯一困ったのは、運転手に全く英語が通じなかったことです。ウルグアイの公用語であるリオプラテンセ・スペイン語が少しでも話せれば良かったのですが、知っている単語は、ウノ(数字の1)、バニョ(トイレ)、ナショネス・ウニダス(国連)くらいでした。

運転手がどの程度、夫人のスケジュールを把握しているのかも分からず、常識的に考えれば緊急時対応の為に夫人を下ろしても現場を離れることはないと思うのですが、国が代われば常識も異なるので、一度車を降りて戻ってきたときにちゃんと運転手がいるかかなり不安でした。午後3時に現地に戻ることを伝えたかったのですが、スペイン語で3をなんと言うかも分からなかった為、著者は自分の腕時計を運転手に見せながら、指で針に模して「ウノ、ウノ、ウノ」とやったのです。もしかしたら、そんなことをしなくてもちゃんとずっとその場で待機していたのかもしれませんが、運転手は著者に笑顔で「シィ(はい)」と言っていたことで著者は言いたいことはちゃんと通じたんだと確信しました。コミュニケーションって発想の転換なんです。人種が違っても同じ人間ですから、伝えたいという気持ちがあれば、言葉をそこまで知らなくても、意思の疎通は可能です。

著者はこの経験から、その後色々な国で独自のコミュニケーション法を確立させていきました。今後コロナ禍が落ち着き国際的な人の往来が元の状態に戻れば、世界で通用するコミュニケーションスキルの重要性が増すことは間違いありません。CP Academy CP502 Survival English Communicationでは、これまで70近い国々で警護の任務につき、現地の人とも交流してきた著者の経験に言語学的解釈を加え、日常生活にも応用可能なコミュニケーション法を指導しております。海外での警護キャリアを目指す方はもちろん、中学高校で勉強した英語の内容なんて忘れてしまったという方、英語に苦手意識がある方もぜひご参加下さい。


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