ボディガードの仕事は24/7

4号警備を提供している民間警備会社の多くは、Project-BaseではなくHourly Base、つまり時間給で契約をする場合がほとんどです。つまりクライアントの外出時に限定された警護/エスコートというスタイルが基本ということです。知人から聞いた話では、ボディガード養成学校を経営する会社が、その学生を使ってワンコインでの警護/エスコートの真似事を提供していたりもするようですが、通常、プロに警護/エスコートを頼めばそこそこの金額になります。特に脅威レベルがそこまででもないクライアントの場合には、少しでも金額を抑える為に外出時のみで良いと思うのはいたって普通のことです。ボディガードも、一種のサービス業ですから、クライアントがリスクを承知でそう望むのであれば、それは仕方がないことです。しかし、警護/エスコートについて何も知らないクライアントが、ただ金額を抑えることだけを考えて限られた時間のみの警護を希望しているとしたら、プロの警護人としてクライアントにそれではリスクを抑え込むことが困難だと説明する責任があります。

もちろん、24/7(年中無休)のサービスであってもリスクを0に抑え込むことは不可能です。しかし、限られた時間のみのサービスと24/7のサービスでは、当然のことですが効果には大きな差が生じます。

以前、カウンターサベイランスの項で書きましたが、プロの襲撃者は入念の下調べをしたうえでヴァルネラビリティを見つけだし策を練ったうえでアクションへと移ります。当然、それなりのレベルの警護/エスコートという前提ですが、警護/エスコートが外出時のみの限定的だと分かれば、襲撃する側はその時間帯を避ければ良いだけです。

限定的な時間であってもそれなりの金額がする警護/エスコートのサービスを依頼するクライアントには、それなりの地位があり金銭的にも余裕がある人が多いと思います。そういうクライアントであれば、自宅やオフィスには、ハイレベルな警備システムが設備されていることを期待しますが、金銭的に余裕がある人が、自宅に適切な警備システムを設備しているとは限りません。特に海外と比べて治安が良い日本では、一般的にSecurity Awarenessが低い傾向にあり、その必要性をあまり感じていないことが原因です。プロのボディガードは、たとえ契約が外出中のみの限定的なサービスを求めるクライアントであっても、可能な限りクライアントの自宅やオフィスの警備設備をチェックして、どこにヴァルネラビリティが潜んでいるのか把握、必要であればクライアントに教示が出来るようにしておく必要があります。

ちなみに私が約10年間、警護のキャリアを積んだ国連事務総長の警護は、脅威レベルにはそこまで高くはありませんでしたが、24/7 baseでサービスを提供していました。人数などの詳細は警備上の理由から教えることは出来ませんが、自宅には事務総長が不在時であっても常に警備の人間がいます。それにプラスして、かなりの数の監視カメラが至るところに設備されており、その映像は自宅の警備担当と本部に駐在する専門官によって常に監視されています。そしてカウンターサベイランスとして私服で自宅周辺をパトロールまでしています。こうすることで外出先から自宅へ戻る際も自宅やその周辺がどんな状況なのか手に取るように分かり、ルート選びにも反映されます。自宅へ届く荷物や手紙も全て警備担当者がチェックしてから、事務総長へと渡されます。電話も同じで、自宅にかかってくる電話はまず警備担当者が受けてから事務総長のもとへとつながれます。これだけの事をしていてもリスクは0ではありません。

(画像上)自宅用に写真のような小型の検査機が出ています / Security Management March/April 2021より転載。

民間警備会社がここまでの警備・警護を提供するとなれば、十分な警護員の数を確保する必要があるため高額になるうえ、自宅も24/7で警備するとなれば、クライアントの自宅に警備が待機出来るスペースも必要になってきます。そうなると、短期の依頼の場合は特に実現するのは困難ですし、そこまでの金額を払ってまで依頼するクライアントは、まだ日本には多くありません。しかし、海外に目を向けると、日本ではなかなかお目にかかれない富豪も多く存在し、脅威レベルもその国の治安に比例して日本よりも平均的に高い傾向にあるため、民間でも相当な規模の警護、警備を提供している会社が存在します。将来的には海外での警護も視野に入れている皆さんには、こうした警護や警護があるということも知っておいてほしいと思います。


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