列車におけるボディガードの配置

列車と飛行機には大きな違いがあります。搭乗前にセキュリティチェックがあり、空港セキュリティによって身分の確認と武器の持ち込みを禁止されている飛行機に対し、列車の場合はそのどちらもなく誰でも気軽に乗り降りが出来ます。(※国が変われば、状況も異なりインドのように列車であっても乗り込む前にセキュリティチェックがあるところもあります)。

インドの駅

だからこそ、ボディガードの本心としては列車の使用は出来るだけ避けて欲しいと思っています。特に席指定がない普通列車は、クライアントを説得してでも避けたいものです。しかし、 どうしても他に選択肢がない場合もあります。私も一度だけですが、ニューヨークで経験があります。ニューヨークの公共交通(地下鉄)が安全に、そして便利になったので、もっともっと市民に利用してほしいというキャンペーンがあり、当時のニューヨーク市長から国連事務総長に一緒に地下鉄に乗ってほしいという依頼があったのです。観光客にも馴染みがあり、いつも人が多いグランドセントラルステーションから市庁舎があるシティホールステーションまでを地下鉄に乗るというプランでした。この時は、人海戦術で何事もなく無事に任務を遂行することが出来ました。地下では国連本部の警護チームとニューヨーク市警の私服警官が車内の8割以上を占めるという異例の形で対応し、地上でも万が一のことを想定して地下鉄車両を追う形で車列が走り、ゴールの市庁舎にもう1チームの車列が待機させました。ここまで大規模の警護はなかなか出来ることではないので、とにかくクライアントには普通列車の使用は避けてもらうことが大事です。

新幹線は、指定席により1車両に乗る最大客数が分かることから、普通列車に比べると警護はしやすいと言えます。国連時代、毎年のように国連事務総長の警護で日本を訪れていた私は新幹線での警護を何度も経験しています。

新幹線には、グランクラスという飛行機で言うファーストクラスのような席があるのをご存じでしょうか?このグランクラスは、車両の最後尾に配置されることが多いようです。そして席も他の車両に比べるとかなり少なくなっています。新幹線を利用するのであれば、このグランクラスの席を取ってもらえると警護プランを立てるのが楽になります。

私が実際に日本で新幹線を利用した際に敷いた警護プランを紹介したいと思います。この時はクライアント+夫人だったので5Bにクライアント、5Cに夫人、そして国連の警護は最後尾の6B、6Cと6A、そして出入口付近の1Aに配置しました(※進行方向は東京方面)。セキュリティ的には、クライアントを6Bに、そして夫人を6Cにして、警護をその前の列に配置しても問題はありませんが、クライアントに後ろからずっと見られているのはあまり気持ちよくないので、このような配置にしました。

飛行機と違い外からのアクセスも可能な列車の場合は、クライアントを窓のすぐ脇の席に座らせるのも避けます。

新幹線のグランクラス

飛行機におけるボディガードの配置と同様に、車種や席、そして警護の人数によってその配置も変えなくてはなりません。プロのボディガードは、事前に出来る限りの情報を入手して、その時の最適なプランを立て、実行することが求められます。


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