以前、ニューヨークの国連本部のDepartment of Safety and Security(以下、「DSS」という)へどうやって就職したかは書きました[その記事はこちら]。今回は、Executive Protection Unit(以下、「EPU」という)に私が配属された経緯を書きたいと思います。
国連本部には、私が所属したEPUの他にもSpecial Service Unit(以下、「SSU」という)というよく似た部署があります。EPUは、主に国連事務総長を筆頭に国連の要人の“警護”を担当する部署で、それに対してSSUは国連本部を訪れる要人を“エスコート”する部署でした。
※少し本題から脱線しますが、毎夏、ニューヨークの国連本部で行われる国連総会(General Assembly)には、各国のトップが参加します。日本からも毎年、首相が参加します。日本の首相が国連総会で国連本部に来られる際は、SSUのオフィサーがState DepartmentのエージェントとSPのサポート(エスコート)をします。国連本部の敷地内は治外法権の為、SSUのエスコートなしにState DepartmentのエージェントやSPのみで首相を案内することは許されていません。
アメリカの警護機関について詳しくない方は、「State Department?シークレットサービスではないの?」と思ったのではないでしょうか?シークレットサービスが護るのは;アメリカ大統領とその家族、元アメリカ大統領、大統領選挙中は候補者など、そして他国の「国家元首(Head of State)」がアメリカを訪れる際です。日本の国家元首は、天皇陛下です。首相は、Head of Government なのでシークレットサービスは基本的には警護を担当しません。
本題に戻ります。SSUのオフィサーもEPUのオフィサーと同じようにダーク系のスーツに身を包み、耳には無線のチューブコイルが入っているため一般の人には同じように見えてしまいます。しかし、SSUのオフィサーたちの主な仕事は、エスコートとサベイランス(Surveillance)で、警護ではないので選抜方法も受けないといけない訓練も全く異なってきます。
もし私と同じように国連本部で「警護」を経験したくて出願する方がいましたら、間違えずにEPUを目指してください。
国連のフィールドミッション(FS)での警護なら、(十分な警護経験があることが証明さえ出来れば)制服勤務からスタートせずともそのポジションを得ることは可能です。しかし、ニューヨークの本部で警護チームに配属されるには、警護経験があってもまずは制服勤務からスタートすることになります。
DSSの職員には、毎日デイリーオーダーというDSSの職員がオペレーションをするうえで知っておくべき情報が全て載っているメールが毎日届きます。デイリーオーダーには、訓練やプロモーションの情報なども載っています。EPUでは、不定期で選抜を兼ねた1週間の訓練の開催しており、EPUに配属を希望するオフィサーは募集が出たら、直属の上司の推薦をもらい応募します。
EPUは、DSSの中でも花形の部署なので、当然選抜訓練も人気です。私は、5度目の応募でようやく選抜訓練に選ばれました。しかも、補欠での当選でした。
私は警護チームに配属される以前は夜勤(午前0時から午前8時までの勤務)で、EPUのスーパーバイザーとの面識がほぼなかったこと、そして警察や軍隊の経験が全くなかったことが選ばれなかった主な原因だったようです。おそらく身体も小さく、経験がない日本人には無理だと思われていたのでしょう。
経験のなさをカバーする為に私は、国連とは関係なしに同僚数名とミシシッピー州にあるTactical Energetic Entry System (TEES)で警護の訓練を受けました。その後は、休暇を利用してコロラド州まで行き、80万円近くの大金を払いExecutive Security International (ESI)の警護訓練も受講しました。ニューヨーク州の救急救命士(EMT-B)にも合格しています。
選抜試験に選んでもらえたのは、こうした努力を評価してもらえたからだと思っています。どこの世界でも、えこひいきは存在します。1度や2度、選ばれなかったからといって腐っていてはダメです。選ばないといけない理由をどんどん作っていけば、いつか必ず選ばれます。
TEESやESIでの訓練のおかげで、私はEPU選抜訓練で優秀な成績を残すことが出来ました。
EPU選抜訓練の内容をこちらに書くことは出来ないので、興味がある方はぜひFJ Protection ServiceのCCPSコースに挑戦してみてください。
EPU選抜訓練で優秀な成績を残したオフィサーのみ、3ヶ月のOJT(研修)への参加が許されます。そして、OJTで認めれたオフィサーは、晴れてEPUの配属となります。ストレスやプレッシャーがない訓練では、よく出来ても、本番でミスをするオフィサーは3ヶ月待たずにOJTを打ち切られることもしばしばあります。その辺は日本と違いかなりシビアです。
なかなか長く大変な道のりではありますが、晴れてEPUのメンバーになれれば、他では得られない経験を積むことが出来ます。日本の民間警護のあり方に満足が出来ない人には、海外に出て行って色々経験を積んでほしいです。
弊社のCCPS合格者で、国連本部DSSで働いてみたいという方はFJPSが全面的にサポートをしております。
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