ケンブリッジ辞典によると、「Selfie」とは;a photograph that you take of yourself, usually with a mobile phone. Selfies are often published using social mediaと紹介されています。要約するとSNSに投稿することを目的にスマートフォンを利用した自撮り写真だということです。総務省の情報通信白書によると、世帯のスマートフォン保有率は8割を超えていますし、SNSのユーザー数は国内だけでも約8000万人もいます。そうした状況から著明人との2ショット自撮りをSNSに投稿すれば注目を集められるので、ファンでなくても近寄ってきてセルフィーを撮ろうとする人が多くなりました。ボディガードからすると、警護対象者(以下「V」)に近づいてくる素性不明の人は避けたり、一定の距離を保ちたいというのが本音です。しかし、ファンや支援者を一切合切排除することは、Vに対する世間のイメージを悪くしかねません。明らかに怪しい、危険な人物は遠ざけますが、明らかな脅威がない限り、数や時間の制限は設けてもセルフィ―を全て禁止することは稀です。そこで今回は、素性が分からない人物とVがセルフィ―を撮る際にボディガードが気をつけるべきいくつかのポイントについて紹介します。
2013年にイギリスのオックスフォード辞典がこの年を代表する言葉として、「Selfie Stick(自撮り棒)」を選出したことからも分かるように、2011年あたりから2014年までは自撮り棒を利用してセルフィ―を撮る人が多くいました。しかし、ボディガードは万が一自撮り棒を持つ人物がVの近くに寄ってきたり、自撮り棒を使用してセルフィ―を撮ろうとするような動きが見えた場合には止めなければなりません。なぜなら、伸縮性がある鉄の棒である自撮り棒は、使い方によっては武器にもなるためです。実際、人混みの中で使用し他人に危害を加えてしまったり、博物館や美術館などの展示物を破損してしまったりする事故が相次ぎました。それにより近年では自撮り棒の使用禁止措置を取る場所が増えたため、使用する人の数が激減しています。自撮り棒は警護をする上でもかなり厄介なものだったので、使用者の激減や、自撮り棒の使用を注意することが特別なことではなくなり、相手が気を悪くする可能性も低くなったことは、ボディガードにとって願ってもないことでした。
セルフィ―を撮る際に、Vを仲が良い友人とでも勘違いしているのか肩に腕を回そうとする人が時々いますが、これは絶対に許してはいけません。理由は2つあり、1つはそこからヘッドロックなどをされる危険性があること、2つ目は肩に腕を回されて撮られた写真がSNSに投稿されてしまった場合イメージが良くないことことです。では、Vがファンや支援者の肩に腕を回すのはどうでしょう。こちらは、Vに対して世間が持つイメージにも関係してきます。フレンドリーが売りなVなら良いかもしれませんが、人によっては態度が大きい、傲慢といったような印象を持つ人もいるでしょう。ファン/支援者が異性の場合には、不要なボディタッチはセクハラの危険もあるので、やはり出来る限り避けてもらう方が無難でしょう。ハリウッドスターは、フレンドリーに肩に腕を回すようなしぐさはするが、実際には触れていないといったテクニックを駆使してファン/支援者とセルフィ―を撮るサービスをしている人もいると聞きます。Vがファン/支援者とサービスして身体に触れた写真を撮ってあげたいいう場合には、こうしたテクニックを指導することもボディガードの役目の1つです。
腰や背中に手や腕を回すことや腕を組むことも肩同様に、ファン/支援者、そしてクライアント側からも共に避けるべきです。
なお、ファン/支援者がVの身体に触れそうな場合には、ボディガードはその手を軽く払います。それでもなお肩や腰に手を回そうとする場合には、親指をグリっとしたりするなどのソフトハンドスキルを使用して引き離します。著者の経験上、肩や腰に腕を回そうとした際に、その腕を払われるとビックリしてボディガードの方を見て、状況を理解し、それ以上しようとはしません。
1度、立ち止まり1ファン/支援者とのセルフィ―を許せば、特に人が多くいるような場所では1度きりのストップで終わることはほぼ稀で、その後数度止まることになることも理解しておかなければなりません。止まる回数、時間が増えれば増えるほど、リスクは高まります。事前にアドバンスが、ストップの限度や時間、そして止まる場所を見極めておくこともとても重要です。
※コロナ渦では、密やソーシャルディスタンスを理由に特に危険がないファンや支援者であっても、Vとのセルフィーを嫌味なく断ることが出来ますが、コロナが完全に終息し、また以前のような社会に戻った際の参考にしてもらえると幸いです。
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