不審車両を覚える「CLAIMS 」

前回、不審者を覚えるのにAbbreviation(略語)の「ABCDEFG」が便利だと紹介しましたが、今回はその不審車両バージョンです。私は不審車両を覚えるのには、「CLAIMS(要求)」と記憶していました。

Color

車体の色。因みに日本でもアメリカでも、白が一番人気で、その次に黒、グレー、シルバーとなっており、この4色で全体の半数以上を占めています。そのため、派手で目立つ色の車を使用するようなバカな襲撃者は滅多にいません。逆に言えば、トヨタのクラウンアスリートの限定カラーであるRe-Born Pinkのような珍しい色であれば、それだけでかなり決定的な情報となります。

(画像引用元)https://global.toyota/jp/detail/1740618

License Plate # 

日本語ではナンバープレートですが、アメリカではライセンスプレートと言います。アメリカの場合は、州によってかなりデザインが異なるので、遠目で見分けることが容易です。あとは番号ですが、通常は5桁から7桁、最大8桁までの数字とアルファベットの組み合わせで出来ています。国連本部があったニューヨークは、ランダムなフォーマットでしたが、私が最後に住んでいたニュージャージー州では、4文字と2数字の組み合わせのフォーマットになっており、著者が乗っていた車の番号も「Y11JAL」とかなり覚えやすくなっていました。日本にも地方版図柄入りナンバープレート(有料)もありますが、多くは全国共通のデザインのナンバープレートとなっています。同じデザインな上に数字に比べて、運輸支局又はその自動車検査登録事務所を表示する文字が小さく遠目では少々見にくいかもしれません。しかし、当然ながらきちんとしたフォーマットがあるので、そちらを理解しておくと記憶しやすくなると思います。

(画像引用元)一般財団法人 自動車検査登録情報協会

Age (Condition) 

年式が分かれば、それ以上なことはありません。しかし、車に詳しくない一般の人がそこまで識別するのは難しいので分かる範囲で覚えれば良いでしょう。どこのメーカーも数年ごとにモデルチェンジをしていて、場合によっては同じ車種でも見た目がだいぶ変わることがあります。大胆なモデルチェンジによりかなり形が変わった場合には、「○○社の○○の○○~○○年のモデル」ぐらいまで見極めることが可能です。著者が国連に入職してからしばらく乗っていた日産のパスファインダーも年式によって雰囲気がガラリと変わる車でした。私は2005年のR51型に乗っていたのですが、前年の2004年までのR50型とも2012年以降のR52型とも一目で違いが分かるようになっていました。そのため、車にあまり詳しくない著者でも街でパスファインダーの不審車両を見つけた場合には、パスファインダーの○○~○○年のモデルまで見極めることが可能です。

(画像)元愛車、2005日産パスファインダー。 4000ccのガソリンがぶ飲み車でしたが、大好きな1台でした。

Identifying features (Scratches, dents, stickers, roof rack, bumper guard …etc)

日本では、車をステータスシンボルとして見ることがあるため、いつもピカピカに磨いて綺麗な状態を保つ人が多い傾向にあります。しかし、アメリカではよほどの高級車でない限り交通手段の1つ、道具といった認識です。このように国が異なれば存在、扱われ方も異なります。日本では傷や凹みが出来ればすぐに修理をしますが、アメリカでは走るのに影響がない傷や凹みならば、そのままにしている人も少なくありません。折れて取れてしまったサイドミラーをガムテープでくっつけていたり、閉まらないトランクを紐やガムテープで閉めていたりする車も度々見かけます。傷、凹み、特殊なカスタム、装備品、ステッカーがある場合には、車両を特定する材料になるので、記憶しておきます。他にも、もし車内に乗る人の数やその特徴なども分かれば記すようにします。

Make/Model

メーカーと車種を特定します。国や地域によって人気のメーカーや車種は異なります。任務地の傾向は事前に把握しておきましょう。著者はこれを怠り、警護班に配属されたばかりのころに出張で行ったヨーロッパの某国で恥をかいたことがあります。出張先で不審車両を見かけた際、アメリカや日本では見かけることがないエンブレムを付けた車だったため、現地の警察に車のメーカー名を聞かれても答えられなかったのです。その後調べて、チェコの自動車メーカーSkoda(シュコダ)社製の車で、ヨーロッパでは結構メジャーなブランドだと知りました。

Size/Shape

人気の車種も国や地域によって異なるため、他項目と同様に任務地の傾向を事前に学んでおくと良いでしょう。日本であれば、軽自動車や軽トラといった小さな車も人気ですが、アメリカではむしろ大型車が人気ですし、日本ではあまり見ることがない大きなピックアップトラックも多く走っています。日本では、アルファードやエルグランドのような大型ワンボックス車も人気ですが、アメリカではアルファードのようなタイプの車は売られていません。

(画像)トヨタ・アルファード (画像引用元)https://toyota.jp/alphard/

ボディガードは業務中、常にアンテナを張り巡らし、不審者、不審車両、不審物がないか注意深く観察し続けています。しかし、せっかく不審車両を見つけても、その情報を的確にチームメイトと共有出来なくては、リスクリダクションの効力は半減してしまいます。車に興味がなくても最低限、その国、地域で人気の車種は知っておくなどの対策を行い、的確な情報共有が出来るように備えましょう。なおこれは、警護だけでなく、警備の人にも使える技術です。


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