日本でもクレー射撃や狩猟目的に散弾銃やライフルを合法的に所持することが出来ます。年々その数は減っているものの、令和2年度の警察白書によると、国内で許可を受けている猟銃、空気銃の総数は184,675丁と意外にも少なくありません。しかし、厳しい銃規制のおかげで、警察官もしくは自衛隊隊員でもない限り拳銃とは一生無縁の生活を送る人がほとんどの日本では銃に対しての知識が一般市民でも合法的に銃を所持出来る国の人に比べて乏しい傾向にあります。
実銃を撃ったことがある人はお分かりだと思いますが、銃はただ撃つだけなら難しいことは一切ありません。弾を込め、引き金を引けば弾は発射されますから、小さな子供でも撃つことが出来ます。問題は狙い通りに撃てるかということです。狙ったところに当てられない人の多くは、不慣れな実銃を撃つことに対する興奮や恐怖により引き金を絞る際、無意識のうちに「もう少し」、「もう少し」というAnticipationにより変に力が入ってしまっていることが原因です。これは実銃に慣れてしまえば、すぐに解消することが出来ます。以前も書きましたが、日本には東京マルイを始め、世界的に人気があるエアガンメーカーがいくつかあり、サバイバルゲームも人気です。エアガンでも十分に射撃の練習は出来るので、将来的に海外での警護を視野に入れている方は、とりあえずエアガンでガンハンドリングに慣れておくと良いでしょう。
今回、知っておいてほしいのは、ガンハンドリングに関する情報ではなく、銃に関する色々な統計です。Assault Prevention LLCのTerry Hipp氏の著書「Executive Protection (2020)」によると;
- 40% of those shot in the heart will survive.
心臓を撃たれても40%の生存確率がある。つまり、撃つ側も心臓を1発貫いたからといって油断は出来ません。前職では、胸に2発撃ち、それでも相手が止まらない場合には眉間に1発という決まりになっていました。
- If shot in the heart a person may still fight for over one minute.
心臓を撃たれても、1分以上戦い続ける可能性もある。コロラドで一緒に訓練を受けた仲間でSeven Spears Security International代表のウェスト氏は、心臓ではありませんがイラクで片目を敵に撃ち抜かれ義眼なのですが、彼曰くアドレナリンで撃たれてしばらくして仲間から撃たれていることを指摘されるまで状況が理解出来なかったと言います。「火事場の馬鹿力」なんて言葉もあります。油断は大敵ですし、自分が撃たれた側であれば、すぐに諦めてはいけません。
- 85% or more of self-defense shootings are in low light or darkness.
セルフディフェンスでの射撃をする際の85%以上が薄暗い状況です。前職では、毎年ある射撃試験で、わざわざ射撃場の電気を落とし薄暗い中での射撃の訓練もしていましたし、警護チームの銃のサイトは暗闇で光るグローサイト(蓄光サイト)に変更されていました。フラッシュライトがボディガードの必需品なのも理解してもらえると思います。
- 90% or more will be at 21 feet or less, most are 10 feet or less.
銃撃の9割が、約6.5mよりも近い距離で起こっています。銃は飛び道具で、拳銃ですら射程圏内は30m程度あります。しかし、近距離での使用が多いので、ボディガードは長い距離の的を正確に射貫くマークスマンシップよりもスピードと正確性重視の射撃技術が求めれることが分かります。
- If you are shot in the chest with a handgun, your change of dying is 14%.
拳銃で胸を撃たれた場合の死亡率は14%と意外にそこまで高くありません。
- If you are shot twice, your chances of dying are 70%.
しかし、2度撃たれてしまうと、死亡率は70%まで一気に跳ね上がります。続けて銃弾を受けないようにするためにもカバー(壁など)を上手に使えるようになっておくこと、動きを止めないことが重要です。
- If shot in the chest with an AK-47, the odds of death are 17%, with a shotgun; 64%.
強力なAK-47カラシニコフで撃たれた場合でも死亡率は17%と意外にそこまで高くありませんが、日本でも合法に所持することが可能な散弾銃で撃たれた場合の死亡率は64%もあります。
以上の事から、銃はセルフディフェンスの上で絶大な威力を発揮する道具でありますが、銃を持つことで全てが解決するわけでないことを理解しておかなければなりません。そして、上記の事実を知っておくことで、ボディガードとしてどのような対応をすべきかが分かるはずです。
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