ボディガードの繁忙期と閑散期は、意外と気候による影響を受けやすいものです。民間警備会社は、政府要人等の警護を担当する警視庁の警護官とは違い、クライアントとはプロジェクト/ミッション毎の契約や、短期間の契約な場合が多く、特に日本国内で民間警備会社が警護の年契約を結んでいるといった話は聞いたことがありません。日本の治安もひと昔前と比べると悪くなったという声も聞きますが、それでも海外と比べると日本はまだまだ安全なので警護が年中必要な環境ではないのがその要因でしょう。United Nations Office on Drugs and Crimes (UNODC)によると、日本の殺人事件の発生率*は、0.2件、強盗の発生率*は、1.8件です(*共に人口10万人当たりの発生率)。因みに私が20年近く住んだアメリカの殺人事件の発生率は、5.3件、強盗率も98.6件ですから、日本の治安がどれだけ良いか分かると思います。
日本に限らず、海外でもそうなのですが冬の寒い時期(1,2月)は、暖かい時期に比べ外出する回数が少ない為、ボディガードへの依頼も自ずと少ない閑散期となっています(閑散期には、繁忙期に向け訓練を多く実施する警備会社や機関が理想です)。ニューヨークシティのように膝丈くらいまで雪が積もる日も多く、マイナス20度近くまで冷え込む冬だと、VIPじゃなくても外に出たいと思う人は多くないです。
海外のボディガードだと、3月ぐらいから依頼が徐々に増え、イベントも多い夏に繁忙期を迎えます。日本の場合は、雨の日が続く5月から7月にかけての梅雨の時期もおそらく依頼数に影響を与えるでしょう。
私の前職、国連本部では世界中のトップがニューヨークに集う国連総会が開催されるため、9月が1年で最も忙しくなります。自分が働きたいと思っている国、地域、そして会社や機関の事を調べることで閑散期や繁忙期、そして働き方が見えてきます。
東京では7月12日(令和3年)から8月22日までに渡り4度目の緊急事態宣言が発令され、未だ猛威を振るうCOVID-19(コロナウィルス)によって飲食業や旅館業が窮地に立たされているいうニュースを連日耳にしますが、警護業も無関係ではありません。緊急事態宣言により、不要不急の外出自粛が促され、日本に限らず、海外でも本来なら依頼が入りだす時期になってもコロナ以前に比べて警護の依頼数が激減していてボディガード業では食べていけず、廃業して他業種に転職をするボディガードが増えいるという話を多く聞くようにもなっています。イギリスのウェストミンスターセキュリティのサイトでは、「7 jobs you can do after close protection」と言う題で転職先を勧めるような記事まであげている程です。
これからボディガード業を生業にしようと考えている方たちは、短期契約ばかりの民間の場合、気候や今回のCOVID-19のような疫病によっても仕事が激減、最悪の場合には仕事を失う危険性が高いことを理解しておく必要があります。以前、ボディガードの仕事がしたくて4号警備をしている某警備会社に入社したが、いざ実際に仕事をし始めると施設警備ばかりでボディガードの仕事をする機会にほぼ恵まれず満足していないんですが、どうしたらよいかと相談を受けたことがあります。ボディガードの仕事に専念したいのであれば、警護の年契約を結ぶクライアントを持つ警備会社や、機関に勤めるしかありません。そしてそうしたところに勤める為には、幅広い知識が必要です。前述の相談を受けた後輩にも伝えましたが、とにかく色々な本を読んだり、人から話を聞いたりして見聞を広めることが、これからボディガードを目指す若い人たちには求められます。
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