思い出のチャレンジ・コイン

主にアメリカの軍で始まったチャレンジ・コイン文化ですが、アメリカ本土に限ると現在では軍だけでなく警察などのLaw Enforcement業界にもすっかり根づいています。前職の国連本部警備隊は、もともと入隊の条件として警察もしくは軍での経験が問われる為に元米軍人も多く在籍しています。そのベテランたちにより国連本部警備隊にもチャレンジ・コイン文化が持ち込まれ、今ではユニット毎のコインが存在します。

ボディガードのチャレンジ・コインの使用意図はいくつかあります。先ず挙げられるのが、賄賂的な利用です。記念品を貰って悪い気になる人はいません。金銭や高価な品で人を釣るような行為は下手をすれば大問題となりますし、そのような行為をすることは当然認められていません。しかし、チャレンジ・コインであれば手渡しても、交換しても問題になることはありませんし、貰った相手は国連本部警護チームから信頼されているという気分になり、いくばかりか好意や仲間意識が増した状態でサポートをしてくれます。国連本部警護チームでは、主に海外出張の際アドバンスが、大量のチャレンジ・コインを持っていき、現地でサポートしてくれる警察官たちに配ることがよくありました。チャンレジ・コインは大量発注するので、その製作費は1枚数百円と安価です。しかし、その効果は、製作費では測れないものがあります。因みに賄賂的な役目を果たすアイテムには、コインの他にもパッチやピンなどがあります。シークレット・サービスやDiplomatic Security Serviceなども同じようにチャレンジ・コイン、パッチ、ラペルピンを使用しています。日本のSPは、コイン、パッチ、ラペルピンの代わりにイベント毎にオリジナルのカフスやネクタイピンを作り配ることが多いようです。

(写真)シークレット・サービスのフィラデルフィア・オフィスの方と一緒に任務についた際に頂いたラペルピン。
(写真)日本で頂いたもので一番のお気に入りは、大阪で開催された2019年のG20に参加した際に頂いたカフス

そしてもう1つのボディガードによるチャレンジ・コインの使用方法は、そう呼ばれるようなった由来とも言われる本来(?)の使い方です。仲間同士で同じコインを所持し、バーやレストランで「チャンレジ」と称し、コインを持っているか確認します。コインを持っていない者がいた場合には、その者がその場にいる仲間全員の酒をおごり、もし全員が持っていた場合にはチャレンジをふっかけたものが逆にその場にいる仲間全員の酒をおごるという使用方法です。

コイン、パッチ、ピン、カフス、タイピン、かなりの数集めましたが、私の中で一番思い入れが強いコインは、後者の使い方をするコインで、コレラが流行るハイチに出張で行った際の仲間たちが持つものです。以前にも書いたことがありますが、警護業界は狭く、思わぬ場所での再会することが結構あります。ハイチでのミッション後、バラバラになりましたが、仲間たちは、またいつどこで再会するか分からないので、警護任務の際にはいつもコインを肌身離さず持ち歩いていました。綺麗に保管している他のコインとは違い、警護任務の際はいつも一緒だった為、かなり汚れてしまっていますがが、それだけ思い入れが強いコインです。現役を引退し、海外に行くことがめっきりなくなってしまった今でも、コインをまたいつか使うことがあればと大事にしています。


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