ボディガードとモータースキルズ

Motor Skillsモータースキルズ)という言葉を聞いたことがありますか。モータースキルズは、日本語に運動能力です。モータースキルズには、大きく分けて2種類、ファインモータースキル(Fine Motor Skill)とグロスモータースキル(Gross Motor Skill)があります。

ファインモータースキルは、小さな筋肉を使った動き、細かい運動の能力のことで、指先の動きなどがそうです。

グロスモータースキルは、対照的に大きな筋肉を使った動き、歩いたり、走ったり、階段を上ったりする運動がそうです。

イギリスのサセックス大学で、精神状態がモータースキルズにもたらす影響を研究した結果、不安(Anxiety)が脳内でモータースキルを低下させてしまうことが証明されたようです。サッカーのPKを思い浮かべてください。自分が決めないと、その試合に負けてしまうという状況ではストレスによるAnxietyによりパフォーマンスは低下、成功率が著しく下がるという結果が出ているそうです。1994年のアメリカ・ワールドカップ決勝でイタリアの至宝ロベルト・バッジョ氏がPKを外してしまったのが良い例です。

私の前職の国連本部の警護隊では、極度の緊張の中ではどうしてもパフォーマンス精度は落ちるので、繰り返し練習して身体に覚えさせ(マッスルメモリー)、意識せずとも動けるようにする努力をしていました。極度の緊張やパニック状態では、ファインモータースキルよりもグロスモータースキルの方が頼りになります。身体がガタガタ震え、頭も真っ白の中、箸を器用に使い豆を取ることは困難ですが、箸をスプーンに変えると箸よりは豆を取ることが出来る可能性が高くなることは容易に想像できます。

こうしたことからプロのボディガードは、日頃からファインモータースキルをいかにグロスモータースキルに代用できるかを考える必要があると私は思っています。

具体的な例をあげるとすれば、前職で携帯していたサイドアームのグロック19は、他の多くの拳銃と同様にマガジンリリースボタンを押せば、自重でマガジンは落下しますが、前職の警護チームではマガジンを自重によって落とすのではなく、リリースボタンを押したと同時に手でマガジンをガシッとつかみ引き抜くという動作を身体に覚えさせていました。これは、もしマガジンが自重で落下しなかった場合を想定した動きです。同様にスライドを戻す際も、スライドストップレバーを指で操作して戻すのではなくスライドを上からガバッとつかんで戻すように身体に覚えさせていました。

画像引用元: Glock オフィシャルサイト

これはほんの数例で、まだまだ万が一の時に備えてあえて面倒であってもグロスモータースキルで代用した動作は沢山あります。

プロのボディガードと呼ばれるには、コンティンジェンシープランを定期的に見直し、そこで求めれる動きを自分は極度の緊張の中でも果たして本当に出来るのかを考える必要があります。もし細かすぎて出来ないと思うのであれば、グロスモータースキルに代用したら出来るようにならないか考えてみてください。


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