ニューヨーク市警でボランティア

日本のサバイバルゲーム愛好家には、ニューヨーク市警(NYPD)がなかなか人気なようです。警察は、ニューヨークに限らずどこの国でもその国の市民権を持っていないとなることは出来ません。つまり、日本人でもアメリカの市民権さえあれば、ニューヨーク市警の求人に申し込むことが出来ます。実際、日系人のニューヨーク市警のオフィサーには何度も会ったことがあります。バイデン大統領を護るシークレットサービスの責任者は、韓国系のアメリカ人ですし、体格では欧米人に劣るものの、もともと勤勉な性格で、勘も良い人が多いアジア人は移民国家アメリカでも、色々な分野で活躍しています。

こうしたことからも分かるようにアメリカには、人種や性別に関係なく、やる気さえあればチャンスを与えてもらえる土壌があります。これは市民権を持つ人だけでなく、外国人にも同様なことが言えます。

外国人である自分にもニューヨーク市警の手伝いが何か出来ないかと思い、調べてみるとNYPD Auxiliary Policeというプログラムがあることを知りました。

これは、ニューヨーク市に住む、もしくはニューヨーク市に通勤、通学している17才以上の健康でバックグランドチェックで問題がなかった人であれば、誰でも申し込むことが出来るプログラムです。そして費用は、なんと無料なんです。

プログラムに参加することを認められた受講者は、18週間に及ぶ140時間の教育を受け、最終試験に合格すると晴れてNYPD Auxiliary Police Officerとして、正規のNYPDオフィサーの目となり耳となり働くことが出来ます。ここで勘違いをしてはいけないのは、Auxiliary Police Officerという名称ではありますが、あくまでボランティアなので、Police OfficerやPeace Officerのような権限は一切与えられていません。

実際には、何をするかと言うと正規のNYPDオフィサーと全く同じダークブルーの制服に身を包み2人組でパトロールをします。正規のオフィサーとAuxiliaryの違いは、胸につけるバッジ（NYPDでは「シールド」と呼びます）の形（Auxiliaryのシールドは７ポイントスター）、肩のパッチ、そして拳銃を携帯していないことぐらいです。そのためパッと見では、正規のNYPDのオフィサーとの区別がつかないことを利用して犯罪の抑止力となります。実際、その効果はかなりのもので、ニューヨークシティのAuxiliary Policeは全米でも最大の規模を誇ります。ほかにもパトロール中に事件、事故が起きれば、無線で署に連絡を入れ正規のオフィサーの要請、けが人や病人がいれば救急車の要請、必要があれば交通整理などをします。

私は、大学院入学後すぐにこのプログラムに申し込み、国連に入職するまで週1回のパトロールを続けました。

ちなみにボランティアで治安を守る為にパトロールをするというと日本にも支部があり、1979年にニューヨークで発足されたガーディアン・エンジェルスが有名（?）ですが、ニューヨーク市警はその存在をあまり良く思っていませんでした。というのもガーディアン・エンジェルスは、基本16歳以上であれば誰でもなれてしまうためです。Auxiliaryとは違い素性がよく分からない一般市民が、一方的に正義感を振りかざせば、そこには起こらなくてもよいトラブルが発生すると考えられていたからです。

私の人生は、ターニングポイント毎に色々な人からの助けがあり、これまでどうにかやってこれました。国連本部への就職の際にも、当時所属していたニューヨーク市警24部署のAuxiliary Policeコーディネーターがリファレンスになってくれ、国連本部の人事部の人にとても良く言ってくれたのが活きたという話を後になって人事から聞きました。

将来、場所に関係なく警察、警備、警護関連の仕事に就くことを考えていて、アメリカで留学をされている、これから留学をする人たちにはぜひAuxiliary Policeのプログラムに参加してほしいです。ボランティアなので当然どれだけパトロールをしても無休ですが、他ではなかなか体験できない経験を得ることが出来ます。シールドは残念ながら、プログラムから離脱する際に返却しなくてはなりませんが、そのほかの制服などは全て頂くことが出来き、良い記念になること間違いなしです。私も、今も当時パトロールの際に来ていた制服を大事に取ってあります。

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