国連警備隊の拳銃事情

ニューヨークの国連警備隊では、配属部署に関係なく全員が業務時は拳銃(グロック19)を携帯します。国連本部はニューヨークにありますが、国連の敷地は大使館などと同じで治外法権となっているため、独自のルールのもと拳銃を携帯することも出来ます。私が国連で働き始めるはるか以前の話ではありますが、当時は国連独自の免許が存在し、地下には射撃場まであったそうです。現在は、ニューヨーク市の法律にのっとり、ニューヨーク市から免許を交付してもらうため発行までにかなり時間を要し、新人は半年ほど拳銃を持たずに業務にあたります。

国連本部のセキュリティレイヤーは何重にもなっているのですが、銃を携帯していない新人は何かが起きたら真っ先に対応が求められる大外のレイヤーを担当することが認められていません。そのため、丸腰でもそこまで心配する必要がないのです。

私が所属していたExecutive Protection UnitEmergency Response Unitの2チームの隊員に限り年に2度の特別射撃試験があり、これにパスが出来なかった隊員はパスが出来るまでチームでも働けませんし、銃の携帯許可もおりません。その他の部署では、年に1度、ニューヨーク市警と同等の射撃試験をパスすることが課されており、パス出来ないものはパスが出来るまで銃の携帯許可が取り消され、新人と同じ現場を受け持つという辱めを受けます。

Action
国連警備隊の射撃試験の詳細はこちらではかけません。興味がある方は、ぜひセミナーやCCPSのコースに参加した際にこっそり聞いてください。

国連事務総長の警護を担当する警護官は、毎月のように出張で海外へ行きます。アメリカ以外での警護の際には拳銃をどうしているのかという質問を以前受けたことがあります。いくつか例外はありますが、基本はアメリカから拳銃を持っていきます。もちろん、事前に行き先の国から許可証をもらい、その旨を航空会社に事前に伝えておきます。そして出張当日は、拳銃と弾薬はそれぞれ分けてペリカン社の耐衝撃性樹脂のボックスにいれて、鍵をかけ預け荷物としてチェックインカウンターで預けます。

国連には、アジアであればタイのバンコク、ヨーロッパであればスイスのジュネーブとオーストリアのウィーン、アフリカであればエチオピアのアディスアベバに地域本部があります。これらの地域本部の警備隊に拳銃の数に余裕があれば、例外として、そこで借りることもあります。(MP5やG36といった長物が必要な際も現地の国連で借りています)。

Glock 19とMP5(エアガン)

他の例外は、日本です。日本は、世界に誇るとても厳しい銃規制で警護任務の為でも拳銃の持ち込みを許可していません(ここでは書けませんが、例外はあるみたいです)。そのため、日本への出張の際は、拳銃なしでの警護になります。出張先が日本だけなら特に問題がないのですが、日本からニューヨークへは戻らず違う国に行く際は日本へ拳銃を持ち込み、空港で預かってもらうようになっています。

国連事務総長の身の安全は、その国に責任があるので日本滞在中の国連事務総長の警護は国連警備隊の警護チームだけでなくSPも付きます。当然このSPたちは拳銃を携帯していますので、国連事務総長の日本滞在時は誰も拳銃を持っていないから襲うチャンスなんて思わないでください。ちなみに、生真面目な日本人らしいといえば、それまでなんですが、他国の警護に拳銃の持ち込みを許可しない政府は総理が海外へ行く際、SPに携帯の海外への持ち出しを許可していません。日本国内よりもむしろ海外でこそ拳銃を携帯するべきなのに不思議な国です。

日本は警官であっても銃の扱いには、とても慎重です。しかし、海外は銃の扱いは、日本とはかなり異なります。拳銃を持って色々な国へと行きましたが驚くほどずぼらな扱いをする国も少なくありませんでした。

スウェーデンのストックホルムにアドバンス(先着警護)で行った際は、拳銃と弾薬が入った2つのペリカンボックスを預け荷物が出てくるベルトコンベアの前で待っていたのですが、出てきませんでした。空港の職員にその旨を伝えると、特別荷物のブースがあるので、そこへ行くように言われ、行ってみると確かにそこにありました。しかし、夜だったためブースは既に閉まっていて、拳銃と弾薬が入ったペリカンボックスのみ外にポツンと置かれていました。誰も取っていかなかったから良かったですが、日本人からするとちょっと考えられない対応です。

ちなみにアメリカ国内の飛行機移動の際は、エアマーシャルと同じ扱いで、腰に拳銃を携帯したまま飛行機に搭乗していました。本部がアメリカにあり、アメリカは警護の仕事への理解がとても高いので、こうした措置をとってもらえていました。

日本では、なかなか馴染みがない拳銃ですが、国連警備隊になるとどのように扱っているか少しは分かってもらえたんではないでしょうか。


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