教科書通りの警護

まずは2022年5月20日に投稿されたX JapanのYoshiki氏のTwitterを見て頂きたいです。

(引用元: https://twitter.com/YoshikiOfficial)

添付された動画中、コンビニ店舗に入店するYoshiki氏のすぐ背後に身辺警備員だと思われる男性の姿を見て取れます。

緊急時すぐに警護対象者をカバーすることが出来る丁度良い距離を歩き、周囲を警戒する教科書通りの素晴しいムーブです。

しかし、その身辺警備員の男性は(緑色の服を着た)スタッフらしき人にカメラに映りこまないよう注意されるシーンが映っています。そして、その後はその身辺警護員の姿を動画内で確認する出来ません。

以前、警護業に従事したことで出会うことが出来た著名人で1番嬉しかった人がYoshiki氏だと書いたことでお気づきの方もいるかもしれませんが、著者は20年+のXファンでYoshiki氏がアジア人で初めて音楽の3大殿堂を制覇したマディソンスクウェア、カーネギーホール、ウェンブリースタジアムでのコンサートも現地で鑑賞したほどです。ファンの方ならご存じだと思いますが、Yoshiki氏はファンとの交流を大事にしており、海外であっても本当に大勢の観衆が集まり事故などのリスクがあるような場合を除き、同行するのは数名のスタッフのみで警備や警護は特につけていないようです。警備や警護を付けることで、変に物々しくなることは彼のイメージ的にもあまりプラスでないことも考慮されているのではないかと思います。

そんなYoshiki氏なので、著者の予想ではおそらく今回の身辺警備員は主催者側が万全を期し手配したのだと思います。

しかし、Yoshiki氏のTweetにあるようにコンビニへの立ち寄りは「スケジュール通り」なので、主催者側もあまり他の客がいないような時間帯や場所を選んでいるでしょうし、きっとコンビニ側やスタッフが他の客に迷惑がかからないよう入店規制などの対応をしていると思われます。その証拠に最初から店内にほぼ客がいない状況ですし、動画後半に他の客がチラッと映る場面がありますが、その方もすぐサッと他にはけています。

つまり何が言いたいかと言いますと、日本のような安全な国で、しかも事前に周囲が万全を期した状況では、教科書通りの警護をしていてはダメだということです。

CP(身辺警護員)的には間違いではないが、これだとどうしてもカメラに写り込んでしまいます。

日本に帰国後、警護指導をしているとよくマニュアル(教本)がないかと聞かれることがあります。日本らしいと言えばそうなのですが、海外では警護にマニュアルは無しが基本です。状況に応じた判断が出来ないようではいつまで経っても一人前としては見てもらえません。

では、今回のような場合には、どのように動けば良かったのでしょうか。答えは1つではありませんが、警護対象者の背後につくのではなく、カメラに映らないようにカメラの背後に、つまり先頭で動くと言う方法もエスコートとしては選択可能です。

このスタイルであればCP(身辺警護員)は前方も事前にチェックできますし、後方もチェックでき、それでいてカメラに写り込まずに済みます。

日本ではカメラ目線のSP姿をよくテレビで見ることがありますが、海外での警護で良く言われるのは「カメラが撮りたいのは警護対象者」「視聴者が観たいのは警護対象者」、つまり警護官が必要以上にカメラに入り込むなと指導されます。もちろん引きで撮られる場合には入りこんでしまいますが、寄りで撮っているような場面で入り込むのは良しとされていません。もちろん脅威レベル、そして警護対象者の意向などで警護の在り方も異なるので一概にこうするべきだとか、これが正解とは言えません。ただ、もう少し状況を理解することで、今回の動画の中の身辺警護員のようにスタッフに注意されるような失態を晒すことはないかと思います。逆に、もし本当にすぐ背後につく必要があるのなら、スタッフに注意されようがずっと背後につくべきです。

厳しい言い方になってしまいますが警備や警護のことを理解していない人にちょっと注意されて行動を改めるような無計画、そして教科書に載っていたので実践したでは海外で警護業に従事するには厳しいです。


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