2024年12月に防災士の資格を取得しましたので、今回は防災士について書こうと思います。
防災士とは何か?
防災士は、災害に備える知識と行動力を備えた「地域防災の担い手」として、全国で広く活躍している民間資格です。認定は、特定非営利活動法人・日本防災士機構が行っており、2003年の制度創設以降、全国で累計30万人以上が資格を取得しています。
災害の多い日本では、「自助」「共助」「公助」が重視される中、地域に根ざした防災力の強化が急務とされており、防災士の存在がますます重要になっています。
この資格は、消防・警察・自衛隊などの専門職だけでなく、自治体職員、福祉施設スタッフ、学校関係者、一般市民まで、幅広い層に取得されています。中には、気象や報道の現場で活躍する著名人や、防災啓発を目的とする企業の社員なども含まれており、防災士の裾野は年々広がっています。
いばらき防災大学とは?
今回は、私が利用した「いばらき防災大学」についても紹介します。
茨城県では、防災士の人材育成を推進するために「いばらき防災大学」という名称の講座制度を設けています。この制度は、茨城県と日本防災士機構が連携して運営しており、県民が防災士資格をより手軽に、かつ体系的に取得できるよう工夫されています。
対象は茨城県内に居住・通勤・通学している18歳以上の方。通常は年に2回、土日を中心に3日間の日程で実施されます。
開催地は、毎年1回は県庁所在地である水戸市、もう1回は県内の別の市町村で行われる傾向があります。私は水戸で受講しました。やはり県庁所在地ということもあり、他の会場に比べて募集人数も多かったからです。
受講会場は「茨城県トラック協会」でした。茨城県トラック協会は、県内の貨物自動車運送業者を会員とする業界団体であり、主にトラック業界の健全な発展、交通安全対策、労働環境改善、環境負荷の軽減などに取り組んでいます。また、災害時には緊急物資の輸送協力や支援活動も行っており、東日本大震災時にも多くの支援輸送を担当しました。こうした背景から、防災士育成の場としても多く利用されているようです。
ちなみに、トラック協会は水戸市中心部からやや離れた場所にありますが、駐車場が非常に広く、車でのアクセスも安心です。ただし周辺に飲食店は少ないため、昼食は事前にコンビニなどで用意して持参する受講者がほとんどでした。
どんな内容を学ぶのか?そして誰が教えるのか?
いばらき防災大学で行われる講義内容は、単なる知識のインプットにとどまりません。
防災概論、災害の種類とメカニズム、避難行動の実際、災害医療、防災心理学など、実際に災害が起きたときに「動ける人材」となるために必要な視点を重視したカリキュラム構成になっています。
講師を務めるのは、防災実務の第一線で活躍してきた専門家たちです。
たとえば、茨城県危機管理部の現職職員、防災教育に取り組む大学教授、地元消防署幹部、自衛隊出身者、さらには過去の災害現場で指揮を執った経験者など、多彩な顔ぶれです。
私が受講した際には、以下のような講師陣が登壇しました。
- 茨城県防災・危機管理部原子力安全対策課 原子力安全調整監
- 一級建築士
- 専修大学文学部の助教
- 水戸地方気象台の防災気象官
- 国立研究開発法人 防災科学技術研究所の職員
- NPO法人 茨城県防災士会の方々
- 一般社団法人 日本損害保険協会の方
- 社会福祉法人 茨城県社会福祉協議会の方
それぞれが実体験に基づくリアリティのある講義を行っており、受講生からの評価も非常に高かったです。
個人的には、家を購入したばかりだったこともあり、一級建築士による「耐震診断と補強」に関する講義が非常に興味深かったです。また、専修大学の助教・鈴木比奈子氏による「身近でできる防災対策」の講義も、話がわかりやすく、聞きやすかったのが印象的でした。

東京で取得する場合との比較
このブログを読んでくださっている方の多くは茨城県外にお住まいかもしれませんので、他県で防災士を取得する場合についても触れておきます。
東京都などで防災士資格を取得する場合、基本的には有料の民間講座に申し込む形になります。講座は2〜3日間の集中講義+修了試験を経て、日本防災士機構へ登録申請する流れです。
多くの講座では、受講料に加え、テキスト代・試験料・登録料を含めて合計4万〜5万円程度の自己負担が必要となります。
また、東京都の場合、自治体からの助成制度が整備されていないことが多く、全額自己負担になるケースが一般的です。
一方、いばらき防災大学では、講座受講料を茨城県が全額負担してくれるため、受講者の負担はテキスト代(5,500円)と登録料(5,000円)程度のみです。さらに、龍ケ崎市など一部自治体ではこの登録料についても助成制度があり、条件を満たせば実質無料で資格を取得することができます。
実際の受講体験から
3日間という短い期間でしたが、講師陣の情熱と、現場に即した講義内容のおかげで非常に密度の濃い学びとなりました。
特に印象に残ったのは、災害発生時に「誰が何をするか」という明確な役割分担を決めておくことの重要性です。
防災士の役割は、専門家の代わりをすることではありません。しかし、地域社会の一員として、防災活動をリードする存在になることが求められます。


おすすめの教材
防災士になるには、防災士養成コースを受講後、修了試験に合格する必要があります。試験は三択問題30問、正答率80%以上で合格です。
私自身、受講当時は他にも忙しいことが重なっていたため、試験対策に多くの時間を割くことができませんでした。
そこで試験直前にKindle版の
『防災士資格試験(日本防災士機構主催)過去問題・予想問題 合計252問(令和6年対応)』
を一気に読み、試験対策としました。
本来ならば、しっかりと防災士に必要な知識を時間をかけて学ぶべきですが、「とにかくまず合格だけを目指す」という方には、この教材を活用するのも一つの方法です。
(ちなみに私はこの方法で満点合格できました。)
なお、注意点として、防災士資格取得には救命講習の修了も必要です。
いばらき防災大学では、かつては講座内で救命講習も実施していたそうですが、現在は別途、消防署等で「普通救命講習」または「上級救命講習」を受講しなければなりません。茨城県では、これらの講習が無料で提供されていますので、取得は比較的容易です。

おわりに
防災士の資格取得は、「自分や大切な人を守る」という決意を形にする第一歩です。いばらき防災大学のように、地域主導で支援制度が整備されている環境を活用すれば、経済的にも、時間的にも、無理のない形で学びをスタートすることができます。
近年では、企業において警備職にセーフティ(安全管理)やBCP(事業継続計画)への対応を求める動きが強まっています。特にコロナ禍以降、BCPの重要性は一段と認識されるようになり、警備業務に携わる人材にも、単なる警備だけでなく、リスクマネジメントや危機対応力を備えることが求められる場面が増えています。
また、警備業界でキャリアの限界を感じた際には、リスクマネジメントの知見を生かし、BCP関連分野への転向を目指す人も今後さらに増えると考えられます。BCPに関連する資格はすでにいくつか存在していますが、その多くは取得難易度が高く、ハードルを感じる方も少なくありません。
その点、防災士は比較的取得しやすく、それでいてBCPやリスクマネジメントの基礎素養をアピールできる資格でもあります。書き方次第では、履歴書や職務経歴書の中で、BCP関連の知識・意識を持つ人材として評価される可能性も十分にあるでしょう。
今回ご紹介した防災士資格の取得は、単なる「防災」の枠を超え、皆さんのキャリア形成においても大きな意味を持つと私は考えています。
FJ Protection Serviceでは、こうした防災・リスクマネジメント関連資格の取得支援をはじめ、防災意識と実践力の向上に向けた取り組みを、今後も積極的に推進してまいります。
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