COVID-19の影響で、地元茨城の消防署では長く中止されていた上級救命講習が再開されるとのニュースを聞きつけ、2023年7月8日(土)に行われた再開後1回目のコースを受講してきました。受講生の募集は始まってわずか1時間で定員の12名に達したようです。茨城県では、普通救命講習も上級救命講習も完全に無料で受講できるため、非常に人気があり、枠がすぐに埋まってしまいます。なお、東京都では、同じ上級救命講習には教材費として2800円、普通救命講習には1500円がかかるとのことです。東京都の受講者はこの教材費を支払いますが、茨城県ではテキストは貸出され、購入を希望する場合は160円で購入できます。また、CPR/心肺蘇生時に使用するフェイスシールドや三角巾は無料で提供・貸し出しされます。上級救命講習と普通救命講習で同じテキストが使用されますが、以前コロナ渦中に行われた普通救命講習ではテキストが無料で配布され、筆者はそのテキストを持っていたため、今回は購入しませんでした。
上級救命講習は午前9時に始まり、1時間の休憩をはさんで午後6時まで行われました。午前中は、既に普通救命講習で学習した内容を前提として、成人の心肺蘇生(胸骨圧迫)やレスキューブレスについて、マネキンを使用した模擬形式で復習しました。普通救命講習の際は、コロナ渦だったからかもしれませんが指導員が1名でセミナー的に行われていましたが、今回の上級救命は消防隊員4名、地元消防団員ボランティア5名の計9名で生徒2名に対して指導員1名という形での指導だったため、よりハンズオントレーニングで普通救命講習よりも学んだ感を得ることができるコースとなっていました。午前中最後にはAEDの取り扱いについて、テスト機を使って練習しました。お昼を挟んで午後からは、普通講習ではほぼカバーしていなかった幼児や児童へのCPRについて、同じくマネキンを使用して数度の練習を行いました。
その後は、成人、幼児、児童の窒息への緊急対応である腹部突き上げ法(ハイムリック法)、背部叩打法、乳児への胸部突き上げ法を一通り学びました。窒息対応は喉に詰まったものを効果的に排除し、呼吸を回復させる重要な技術ですが、ハイムリック法などは腹部を強く押すため、他の部位にダメージを与える可能性もあり、窒息状態から解放されてもきちんと病院に行かせなければいけないことを改めて思い出しました。このような日ごろから救命に従事していれば普通なことでも、日常的に使わないと知識や技術は忘れていってしまいます。そのため、元EMT-B(救急救命士)である筆者も定期的にこうした講習を受ける意義を感じました。
ここまでで、一度日本の救命講習でよくあるその日習ったことを確認する簡単な筆記テストが行われますが特に合否があるテストではないため、受講生は気軽に受けることができます。
テストの後は、毛布と竹竿、そして毛布のみを用いた傷病人の搬送方法を教わりました。こちらも普通救命講習ではサラッと口頭で触れる程度でしたが、上級救命講習では実際に受講者同士で実際に何度か行いました。こうした搬送方法はアメリカではあまり行われない為、筆者にとって新しい知識や技術でした。
最後には、三角巾を使って腕を吊る方法や止血方法を学びました。その前に、三角巾のたたみ方を学び、本結びの練習を数度行いました。三角巾なんかよりももっと便利で使いやすい救命道具があるにも関わらず、救命講習で今でも三角巾の使用法を指導していることには驚きました。しかし、毛布や竹竿を使った搬送方法にしても、三角巾の使い方にしても、救命講習が一般向けのコースであること、そして自然災害が多い日本では震災時こそ一般人が救命を行う可能性が高いことを考えれば納得できます。防災の意味もかねている救命講習だからこそ、便利な道具ではなく震災時にパッとその場にあるものを代用しての救命処置ができるようにと考え構成されたのでしょう。そういった意味では、筆者がアメリカで取得したEMT-Bは、救命を仕事として行う人たちへのコースのため、最初から便利な器具があることが前提なので、同じ救命でもいろいろと違います。こうした点からも、上級救命講習以上の高度な救命技術を習ったことがあったとしても受講する価値はあると感じました。
茨城県で救命講習を受講する際には、茨城県内に在住、もしくは通勤している必要があります。金額やコースの内容は県ごとに多少の違いはあるかもしれませんが、取っておいて損はないと思います。ぜひお住まいの地域、もしくは勤務先の近くの消防で上級救命講習が行われているかチェックしてみてください!今回、筆者が受講した上級救命にも地元茨城県の警備会社の社員が2名参加していましたが、警備員、特に1号と4号の警備に従事する人たちは定期的に受講し、知識や技術の維持に努めるべきです。
投稿一覧は、こちら