2021年3月9日に閣議決定された航空法改正案により、2022年度ドローンの操縦ライセンスの制度が新設されることとなりました。ドローンの操縦が自動車運転免許同様に国家資格化することで、操縦者の技術が向上し、その結果としてドローンに関わる事故の減少が見込めます。
どちらも結果的には未遂で終わっておりますが、2021年11月にイラク首相が、そして2018年8月のベネズエラ大統領がドローンによる攻撃を受けています。まだ新しい分野で法整備が整っていないドローンによる犯罪を懸念する声は、近年多く聞かれます。しかし、同時にドローンは警備や警護で大きな力を発揮されることも期待されています。実際、既にアドバンスやサーベイランスにドローンを用いる警備会社が存在します。以前、「ハイグラウンドの優位」で書いたように、上から全体の様子が見て取れれば、平面では気が着くことが出来なかったバルネラビリティを発見することが出来、これまでとは異なる警備や警護プランを敷くことが可能になります。
2021年11月現在、ドローンにはいくつかの民間資格があり、その中でも一般社団法人日本UAS産業振興協議会 (JUIDA)の「無人航空機操縦技能証明証」ならびに「安全運航管理者証明証」と、一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)の「回転翼3級」」という2つの団体の資格は人気があるようです。この2つの団体で取れる資格は、2,3日で取得が可能で、費用は20~40万円程かかるようですが、ライセンス制度化された時には試験が免除になると言われています。
既に法律でドローンの飛行が禁止されているエリアもありますが、ライセンス制度が施行されるまでは誰でもドローンを購入し、飛ばすことが出来ます。そうした状況を考えると、先ず上記の2つの団体に比べ安価で受検可能な無人航空機従事者試験(ドローン検定)3級を受検し、実技に関してはYouTube等に操縦技術を学べる動画が多数あるので、自身で身に着けるというのも1つの手段だと思います。そうすることで、JUIDAやDPAの高額な資格にかかる費用を決して安い買い物とは言えない実機購入に回すことが出来ます。
因みにドローン検定には、4級から1級まであり、4級、3級に関しては誰でも受検が可能ですが、2級以上は下位の検定合格が条件となっており、無線従事者のように飛び級で一気に2級や1級を受検することは出来ません。ドローン検定3級は、専用のテキストを購入し、1度読み、オンライン上にある模擬試験を数度すれば受かる比較的やさしい試験です。しかし、ドローン検定に合格すると国土交通省に許可や承認を得る際に役立つ「無人航空機に関する飛行履歴・知識・能力を有することの証明書」の取得が可能になります。それだけでも5600円で受検が出来るドローン検定は受ける価値がそれなりにあると思います。合格率70%前後の簡単な資格試験とはいえ、試験対策のテキストを読んでみると意外に知らないことが多く、色々と学ぶことがあります。
先にイラクとベネズエラで起きたドローンによる事件を書きましたが、日本でも2015年4月22日に総理官邸の屋上に放射線物質を搭載したドローンが落下するという事件が起きています。この事件は大きくニュースに取り上げられたので、覚えている方も少なくないはずです。
そしてこの事件の翌年2016年3月に第190回国会において通称「小型無人機等飛行禁止法」が成立しました。正式には「国会記事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」といい、2016年4月7日に施行された警察庁が所管する法律です。お恥ずかしい話ですが、ドローン検定3級の勉強をするまで、事件後このような法律がすぐに制定されたことは知りませんでした。これもドローン検定3級を受検したことで得た知識です。
警備や警護をする上で法律を知ることはとても重要です。法律を知っていれば、法という盾を使い、敵を制すことが可能になります。総理官邸の警備を担当する者、総理の警護に就く者は、当然この法律を知っておかなければなりません。そしてそれだけでなく、国の重要施設や、大使館等の警備を担う者、原子力施設の警備を担当する者もこうした法律を知っておくべきです。著者が住む茨城県には東海村第二発電所があります。機会があれば、こちらの施設の警備担当者もこうした法律をきちんと認知しているか確認出来たらと思っております。
著者のように、ドローンに興味はあるがJUIDAやDPAのような高額な資格にはなかなか手が出せないという方は、ドローン検定を受検してみてはいかがでしょうか。
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