今回は、以前取り上げたチャレンジコインにも似たアメリカ文化をご紹介したいと思います。
「クラスリング」「カレッジリング」と呼ばれる指輪をご存じでしょうか。アメリカでは、誰もが知る指輪なのですが、日本ではあまり馴染みがない上に、一部知っている人も本来指輪が持つ意味とは関係なく、単なるファッションとして身に着けていることが多いようです。
そこで「クラスリング/カレッジリング」とは何かと調べてみると以下のようなことが分かりました。
クラスリング/カレッジリング(卒業指輪、卒業記念リングとも呼ばれます)は、通常、特定の学校や大学から卒業したことを記念するために着用される特別なリングで、学校のエンブレム、マスコット、または他のシンボルなどがデザインされていて、そこに卒業生の名前、卒業年、宝石などをカスタマイズする場合もあります。クラスリング/カレッジリングは卒業生と母校の絆の象徴であり、学業を完遂させたことを示すものです。伝統的に右手の薬指に着用され、学校名が着用者を向いている状態で卒業まで身に着け、卒業後は学校名が外向きになるように回されます。クラスリング/カレッジリング起源は、ニューヨーク州にあり、筆者もアメリカ在住時代に訪れたことがあるアメリカ陸軍士官学校であるウェストポイントの卒業生が卒業を祝うために制作したリングだと言われています。そして、それが他の学校に広まり、クラスリング/カレッジリングの伝統が発展していったようです。アメリカでは、このようなリングが軍や警察でも仲間意識を高める為に作られることがあります。
筆者には、クラスリング/カレッジリングを作る機会がアメリカ在住時代に4回ありました。最初は、インディアナで大学を卒業した際、2度目はニューヨークで大学院を卒業した際、3度目は、NYPDでボランティアをしていた際に所属の24部署が皆で作ろうとなった際、そして4度目は国連警備隊所属の際です。しかし、4回ともリングを作ることなく終えてしまっていました。
長いアメリカ生活を終え、もうリングを作る機会はないだろうと思っていたのですが、いまだに頻繁に連絡を取る国連警備隊の元同僚がまだ私のことを仲間だと思ってくれており、国連警備隊のリングのデザインをシェアしてくれたのです。(国連本部警備隊のリングは、バッジにも刻まれているStaff Benevolent Association (SBA)/労働組合がデザインして国連本部の許可を得たうえで制作しています)そこで日本でもこうしたリングが作れる会社がないか調べたところ、数は多くはありませんが数社見つけることが出来ました。そして、その中でも日本のプロスポーツのチャンピリオンリングを数多く制作するPhillip Champion Ring and College Ringさんの作品に惚れ込み、メールをしてみました。すると、すぐに店長Fさんが直々に返事をくださり、とても丁寧に対応してくださいました。
筆者の場合はすでに元同僚からもらっていたリングのデザインがあったので、そのデザインをシェアし、良い機会のなのでオリジナルのデザインで気に入らない部分があった為、その部分を少しカスタマイズしてもらうことにしました。
こちらのリングは、標準石として人工宝石が13種類用意されていて、そのうちのどれかであれば追加料金なしで制作できるようです。当初は誕生石であるアレキサンドライトをお願いしたのですが、人口宝石でもカラーチェンジをするアレキサンドライトがあるようですが、こちらのアレキサンドライトはカラーチェンジをしないと教えて頂いたので、標準石の中で唯一天然石であるオニキスに変更をお願いしました。
オーダーを済ませるとあとはひたすら完成を待つだけなのですが、制作には2か月程度を要すので、完成を楽しみにしながら時折、Phillip Champion Ring and College Ringさんのウェブやインスタグラムを眺めていました。すると色々と気持ちの変化が現れ、ただ真っ黒のオニキスではなんかつまらないと思うようになってしまったため、他の天然石に変更が可能か問い合わせてみることにしました。ただ石について素人なので、専門家の方に聞いた方が良いと思い、メールではなく電話でお話させて頂いたとこと、オーダー後の変更にも関わらず快く相談に乗ってくださり、予算とリングに合う天然石をいくつか提案してくださいました。ただ、誕生石のアレキサンドライトは天然石だとお値段が高すぎますし(アレキサンドライトは最も高価な宝石の1つで、ダイヤモンドよりも価値があるとも言われている宝石らしいです)、同じく6月の誕生石のムーンストーンは残念ながら色が好みではなく、国連カラーに近いということでご提案頂いた天然石のロンドンブルートパーズには、かなり心が惹かれたのですが、トパーズは11月の誕生石であり、色以外あまり関係性がない石であった為に決定には至りませんでした。
そこで娘の誕生石であるサファイアを調べてみたところ、ブラックサファイアは、騎士道、守護、ナイト、ボディガードなどが石の効果とキーワードで、これが警護を専門としてやってきたに筆者にピッタリだったので、センターストーンは天然のブラックサファイアでお願いすることにしました。ただ、Phillp Champion Ring and College Ringさんの在庫に、筆者のリングに丁度良いサイズのブラックサファイアがなく、色々知っているところをあたってくださるという店長さんのありがたいお言葉に甘えて探して頂いたところ、オーダーをしてから1か月半ど経った頃、1つだけリングに合うブラックサファイアが見つかったとの連絡を頂きました。
また、一番最初のオーダーではシルバーに金メッキでお願いしていたのですが、電話でお話しさせて頂いたときに、やはりメッキは使っているうちに剥がれてきてしまい、数年ごとにメッキし直さないいけないと教えて頂いたので、石と合わせメッキは取りやめシルバーのままにオーダー変更しました。そして予定通りほぼ2か月で完成品が筆者のもとに届きました。
センターストーンのブラックサファイアは写真だと一見オニキスのように見えますが、日差しにかざすとうっすら断層、そして青が見えます。そのセンターストーンをぐるりと囲うように、United Nations★DSS★NYCと入っています。ご存じの通り、国連といってもアジアであればタイのバンコク、ヨーロッパであればジュネーブとウィーン、そしてアフリカならエチオピアのアディスアベバに本部があるため、NYCと入れて頂きました。DSSは、Department of Safety and Securityの略です。
リング左側には国連警備隊のバッジ、その上には筆者が勤務した期間(2006-2020)が入り、右側には国連のマークとその下には国連本部の創設年1945と入っています。
そしてリング内側は、警備隊時代の愛銃のシリアル番号、警護時代のコードネームや国連時代の職員番号にしようか迷ったのですが、最終的には国連警備隊でよく使われていた「Stronger than yesterday」という言葉を刻んでもらいました。というのもセンターストーンに娘の誕生石を選んだ時点で、将来私が亡くなった場合には、形見として娘に持ってもらいたいので、銃のシリアル番号や職員番号よりも娘にも日々進歩する人生を歩んで欲しいという思いを込めこの言葉に決めました。
Phillp Champion Ring and College Ring さんの親切丁寧な対応、そして完成したリングの素晴らしさには大満足です。確かに、地金の価格が為替相場の影響を受けることなどもあり、アメリカの方が断然安く制作することが出来ます。しかし、アメリカにいるときに同僚のリングを見せてもらいましたが、やはり手先が器用な日本人の職人が手作業で仕上げるリングは違いますね。アメリカで作るよりも良いものを手に入れることが出来ました。国連の元同僚が仕事で日本に来る際には、このリングをつけて行き見せびらかそうと思っています。チャレンジコインのように、再会する際にリングをつけない人がビールをおごるなんていうのも楽しいかもしれません。
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