先日、たまたま聞いていたラジオで高速道路での正しいパンク対応を知らない人が意外に多いという話を耳にしました。あなたは、正しい高速道路でのパンク対応をご存じですか。
まず最初に、タイヤ交換にいくら自信があっても高速道路上では、タイヤ交換や応急処置を決して行ってはいけません。過去には、タイヤの交換中に後続車にはねられ、死亡する事故も起こっています。高速道路上でタイヤがパンクした場合は、道路の端に停車し、ハザードランプを点灯します。そして後方から来る車両に気をつけながら車を降り、後方50m以上離れた場所に停止表示板と発煙筒を設置し、後続車に停止車の存在を知らせます。その後、万が一の追突に備えて、ガードレールの外側に退避し、JAFや自動車保険のロードサービスなどに連絡しましょう。同乗者がいる場合には、同乗者も車内で待つのではなく、ガードレールの外側などの安全な場所で待機します。
また、トンネル内では発煙筒を使用することができません。これはトンネル内で使用すると煙が逆に後続車両の視界を奪い、より危険な状況を招く可能性があるためです。暗いトンネルをよく利用される方は、LEDライト付きの停止表示板などを車の中に携帯しておくと便利です。
ここまでは一般車両の話ですが、警護車両が警護中にパンクしてしまった場合にはどうでしょうか。タイヤ交換のために停車すれば、襲撃されるリスクが高くなるだけでなく、その様子を不特定多数の人に見られたりと印象もよくありません。
そのため警護車両は通常、万が一に備えてランフラットタイヤを使用しています。ランフラットタイヤだからといって、パンクした後も延々と走れるわけではありませんが、一般的に80キロ程度のスピードで、80キロ程度走れると言われているため、一時的な危機を回避するには十分です。つまり、車列のすべての車両がランフラットタイヤを装備している場合には、急を要するパンク対応を心配をする必要はあまりないでしょう。
しかし、ランフラットタイヤは、一般のタイヤに比べ値段が高く、日本だと1本2万~5万円とかなり高額なため、警護対象者が乗るいわゆるVCだけランフラットで、他の車両は通常のタイヤという車列も少なくありません。実は、国連事務総長の車列も脅威が少ない国や地域では費用対策でこうした対策を取っていました。
そして、車列内のVC以外の一般的なタイヤを装備した車両がパンクした場合はどうするのかというと、その対応は、いたってシンプルで、パンクした車両をその場に置いていくだけです。これまでも何度も書いていますが、警護ではとにかくリスクを最小限にとどめることがとても重要です。そのため、完全に安全が確保された場所以外での予定外の停車など、エクスポージャーの時間を長引かせる行動は極力避けなければいけません。
こうした事例からみても、車列に万が一の時の為にスペアVCを用意しておくことはとても重要です。ただスペアVCを車列に入れれるだけの資金的余裕があればよいのですが、VC以外の車両をランフラットにすることができないぐらいだと、スペアVCを用意することも難しいと思います。その場合は、前述の通りVIPを警護車両に乗せ替えるのですが、そのとき警護車両内が警護官でいっぱいでスペースがないことも考えられます。そうした際には、やむを得ず警護官をその場に置いていき、その場に残された警護官は、パンクした車両のタイヤ交換が済み次第すぐに追いかけることになります。こうした対応はパンクだけでなく、車両になんらかの問題が発生した場合も同じです。
脅威により、細かな対応は異なりますが、日本のような安全な国では、狙われる脅威は高くないはずですので、車両に何らかの問題が発生した場合には、セキュリティも考量しつつセーフティのリスクを最小限に抑える対応を優先的に行うのがより有効でしょう。
ただ、もちろん何も起こらないに越したことありません。パンクや故障を未然に防ぐためには、毎朝勤務前に車両の点検を行うことが重要です。国連本部では、専門のメカニックがこの作業を担当していましたが、資金に余裕がない場合は警護官が代わりに行います。メカニックほどの専門知識や技術は必要ありませんが、基本的な点検方法や技能は身につけることが求められます。特殊な作業は難しいかもしれませんが、一般的なタイヤ交換は短時間で行えるようにしておくことが望ましいでしょう。
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