2013年12月5日、パリへの1泊3日の弾丸出張に向かう為、ニューヨークにあるジョン・F・ケネディ国際空港のラウンジでフライトを待っている時に、テレビのニュースでネルソン・マンデラ氏死去を知りました。随分前のことなのに、このニュースをどこで知ったか鮮明に覚えているのには理由があります。
ニュースを聞いた瞬間から嫌な予感はしていましたが、それが見事に的中してしまったのです。パリに到着した夜にニューヨークの本部から連絡があり、警護対象者(以下「V」)はマンデラ氏の葬儀に出席するためニューヨークには戻らずパリから直接、南アフリカのヨハネスブルグへ行くことになったと伝えられました。そしてその警護には、私がパリから継続で任務にあたるという命も同時に受けました。
海外出張も慣れてくると、どんどん無駄な荷物を減らしていき、モビリティ重視となりがちです。しかし、ボディガードとしては、ここに大きな落とし穴が待ち受けています。1泊2日とかなり短期の出張、しかも出張先がパリということもあり、私はとても海外へ行くとは思えないデイパック1つでパリに行っていました。
パリからヨハネスブルグへのチケットがなかなか取れず、パリに延泊となり、その後ロンドン経由でヨハネスブルグへ行くことになりました。デイバック1つの私は、代えのスーツもなければ、ワイシャツや下着も明らかに数が足りません。パリの延泊時に、ワイシャツや下着を購入しようと試みるも、Vが追加の行事を入れた為に買いに行くチャンスもありませんでした。
滞在していたホテルでランドリーサービスを頼むことも考えはしましたが、時間がかかりすぎるため間に合わない可能性もあると諦めざるをえませんでした。結局、パリではホテルのお風呂で下着やワイシャツを軽く洗い乾かすことで対応しました。しかし、乾燥機があるわけでも、外に干せるわけでもないため、なんとなく生乾き臭がするようになっていました。結果的に、1泊3日が1週間の出張になり、その間に3つの国を移動しているので、下着などを洗っても乾かす余裕がない時には、裏技(?)として下着などは裏返しにしてまた着ていました。そんな風に1週間過ごしたので南アフリカからロンドン経由でニューヨークに戻った際には獣臭がすごかったようです。
そんなモビリティ重視で最小限の荷物しか持たない私とは対照的に、短期の出張であっても常にスーツケースを2つ持って行く同僚もいました。私は、なんて心配性な奴だと、彼のことを少々馬鹿にしてみていました。しかし、彼から毎回スーツケースを2つ持って行く理由は1つをなくされても、もう1つのスーツケースに全く同じセットが入っているから困ることがないためだと説明を受けた際になるほどと納得しました。
私も南アフリカの経験から多少モビリティが落ちても、その後出張に行く際は宿泊数が数日増えても、荷物をなくされても困らないような荷造りをするようになりました。
巷ではミニマリストがもてはやされています。ボディガードの装備も、少しでも反応速度を上げるため、あえて選択肢を減らします(ヒックの法則)。しかし、出張の際の荷物はこれらとは反して、万が一に備え十分過ぎるくらいで丁度よいと言えます。
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