「左足ブレーキ」と「送りハンドル」

嘘のような話ですが著名人や政治家の警護任務に就くと、自分まで偉くなったと勘違いをしてしまうボディガードが時々います。このような勘違いをしてしまうボディガードに総じて言えることは、法を知っての上なのか、それとも自分には関係ないと思っているのかは分かりませんが、業務上、法に触れる行為を行うこともやむを得ないと思ってしまっていることです。

どんなに有名でも、どんなに裕福でも、においては誰もが平等です。法を犯せば、当然ながらが与えられます。ボディガードなら、法を犯しても良いという法律はありません。だからこそ、これまでも何度も書いていますが、新任教育や現任教育で教わる警備業法だけでなく、仕事に関係がありそうな法律は勉強をして知っておくべきです。

言い方を変えれば、法を犯さない範囲であれば、一般的にはおかしい/ダメと言われていることであっても警護に活かせると思うことは取り入れても問題がありません。

ここ最近、煽り運転問題が度々ニュースに取り上げられていますが、他の国に比べるとしっかりとした教習所があり最低限の運転技術とマナーを学ぶことが出来る日本はまだまだ優良ドライバーが多く、運転もしやすい国です。私は、高校卒業後すぐにアメリカに留学をしてしまったので、初めての運転免許はアメリカで取得しました。アメリカは、ご存じの通り州によって法律が定められていて、免許の取得方法も州によって異なります。ただどこの州でも運転技術は、教習所ではなく家族や友人から習う場合が圧倒的に多いのです。そのため、大都市以外の地方都市や田舎街ではドライビングスクールが存在しないところも少なくありません。私が免許を取得したインディアナ州の田舎街(テレホート)にも当時そのようなスクールは存在せず、私も例に洩れずアメリカ人の友人から車を借りて練習をしました。※簡単な筆記試験に合格すると、免許保持者を横に乗せれば車道で運転をすることも可能な仮免許をすぐにもらえます。当然、全て自己流なため、当時はとても運転が上手いとは言えませんでした。

数年後、ようやく希望が叶い、国連本部の警護チームに配属になった際に、まず不安だったのが運転でした。ニューヨークシティには、赤色灯を焚いた緊急車両の車列間に割り込んできたりするドライバーがとても多いので、車列で走る際にかなり狭い車間距離で走ることが要求されます。

そんなある日テレビを見ていたら、世界ラリー選手権(WRC)における最年少優勝と最多出走記録の保持者であるスウェーデン出身のラリーカードライバーのヤリ=マティ・ラトバラ選手の特集番組がやっていました。その中で、ラトラバ選手は、「左足でブレーキングをすることで、スロットペダルから足を踏み変えるほんの少しの時間をロスせずに済んだ」という発言を聞き、私は「これは警護の運転にも活かせる!」と思いました。すぐに翌日から左足ブレーキの練習を開始し、左足ブレーキにも慣れたところで、任務の際にも試したみたところ、かなり狭い車間距離の車列中でもかなり心に余裕を持って運転が出来るようになっていました。そしてチーム内でも私の運転技術の向上が認められて、ここぞという際の運転も任されるようになりました。※アメリカでは、何故かアジア人は運転が下手だという何の根拠もない偏見を持っている人が多いです。

でも日本では、高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違いが多くなったことで、「左足ブレーキ」の効果を主調する人たちが一部いるようですが、まだまだ「左足ブレーキ」は一般的ではなく、事故につながるからと教習所等でもブレーキは右足で操作するよう指導されますます。しかし、「左足ブレーキ」は法律で禁止されているわけではありません。

他にも日本の教習所では、良くないと指導される「送りハンドル」ですが、警護車両の運転の際には、敢えて「送りハンドル」にしていました。一般車よりも重量がある防弾車を運転する際には出来るだけハンドルを握る手が片手になってしまう時間を減らすことが常識です。教習所で指導されるクロスハンドルは、短い時間で沢山回せるメリットはあるかもしれませんが、片手になってしまう時間が、「送りハンドル」よりも長くなってしまいます。また路面の影響でハンドルがドライバーの意思に関係なく回されてしまう現象(キックバック)は、誰でも1度は経験したことがあると思います。クロスハンドルだとこうした際の対応も送りハンドルに比べて難しくなります。左ブレーキは、国連本部警護チームの中でも使っていたのは私と数人でしたが、送りハンドルに関してはチーム内で統一されていました。

これからボディガードを目指す皆さんには、何事にも先入観を持たず、法を犯さない範囲であれば、一般的にはダメだと言われることでも使えると思うテクニックをどんどん試してみて欲しいと思います。海外でボディガードとして活躍するには、言語や肉体的なハンディを補って余りある発想力応用力を活かして勝負していくのも良い手でしょう。

※当記事は、左足ブレーキや送りハンドルを推奨するものではありません。挑戦する際には、あくまで自己責任でお願いします。


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