ボディガードのマインドセット

警備員指導教育責任者講習教本で紹介されている技術について、ボディガードは自らの行動範囲を狭めるようなポジション取りをするべきではないと書きました。

ドアとドアの間に立つというポジショニングは、行動範囲を制限するだけでなく、視野の制限にもなるリスクがあります。そして、何よりもクライアントをコントロールするのが難しくなることが最大の問題です。

引用元: 警備員指導教育責任者講習教本(全国警備業協会)P.38

ボディガードのより良いポジショニングの取り方のコツは、クライアントとの間に出来る限り「壁(ドア)」を作らないということだと思っています。

その際たる例が回転扉(リボルビングドア)です。コロナの影響で使用を控えているところもありますが、オフィスビルやホテルなどでよく目にするかと思います。ドアとドアの間に身を置くことに何の疑問も持たないボディガードは、きっと回転扉を使うことに何の疑問も持つことがないかもしれません。しかし、ボディガード業界で、回転扉を使うことは良しとされていません。その理由は、簡単で回転扉はクライアントとの間に「壁(扉)」が出来るからです。ボディガードが2人以上いる場合には、先にボディガードを建物内にも配置することで回転扉を使うことによるリスクの軽減は可能ですが、プロのボディガードはそれでも回転扉を使うことを出来る限り避けます。

回転ドア

クライアントの中にも勘違いをしている人がいますが、ボディガードは決して秘書ではありません。日本という安全な国の場合は、身の安全よりもクライアントのイメージを守る業務に比重が置かれるのは仕方がないことですが、ボディガードはあくまで「警備」のプロであることを絶対に忘れてはいけません。よく海外のボディガード教本では、「What if」と常に最悪の場合を想定して自問自答するように指導しています。日本でも、おかしな事件が増えてきていますし、これからは日本のボディガードもWhat ifのマインドセットが必要不可欠です。

また、ボディガードが、クライアントの地位に臆するようではその役目を果たせません。ストーカー被害が多くなったことで、一般人でもエスコートサービスを依頼する時代になりました。しかし、まだまだボディガードを雇う人には、それなりの地位を持つ人が多いと思います。相手の地位に萎縮するようなボディガードでは、いくらWhat ifのマインドセットをしていても、緊急時の対応が遅れる危険があります。

私は、ニューヨークの国連本部で警護をしていた際、国連のトップである国連事務総長やNo.2の副事務総長の警護を担当していました。警備隊でも平職員であった私の階級は下から数えた方が早いぐらいで、事務総長の間にはかなりの差があります。年齢も上なので、当然ながら事務総長や副事務総長と話をする際には、出来る限り丁寧な言葉で話をします。しかし、プロの警護官として事務総長相手であっても、警護面ではどうしても譲れないときには少々語気を強め意見したこともありました。プロとしての誇りをもって接していれば、地位、階級、年齢に関係なく、きちんと言い分を聞いてもらえるものです。日本人には珍しく、かなりストレートな物言いをする性格の私ですが、強い信念と誇りを持って任務に就いていましたので、特に第8代事務総長・潘基文氏と第3代副事務総長のヤン・エリアソン氏の2名から絶大な信頼を置かれていたと自負しております。

What ifのマインドセット、強い信念とプロとしての誇りを持つことでボディガードはより高いレベルへとステップアップすることが出来ます。現在ボディガードの仕事をされている方は、一度プロの目線で自身の仕事を見直してみてください。


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