シークレット・サイン/コード

ボディガードの隠語」では、クライアントの情報が盗み聞きなどで警護チーム(以下「チーム」)の外に洩れることを防ぐため、チーム以外の人間には何を話しているのか分からないようにするテクニックを紹介しました。そして「ボディガードの合言葉と合図」では、クライアントとチーム間の取り決めについて紹介しました。今回ご紹介する「シークレット・サイン/コード」はチーム内での取り決め、つまりチームの誰かが人質となってしまった際に、そのことを襲撃者に悟られることがなくチームに伝える手段についてです。

人質となる可能性が最も高いのが、場合によっては1人で行動することもある先着チームのメンバーです。本隊は、先着チームからのGOサインなしに警護対象者(以下「V」)を目的地に連れて行くことはありません。シチュエーションは刻々と変わるものなので、本隊と先着チーム間では目的地到着まで何度も何度も連絡を取り合います。許されるのであれば、本隊からの連絡に対して答えない、もしくは本隊にそのままの状況を伝えることが一番簡単な方法です。しかし、何らかの理由で本隊に本来の状況を伝えられない場合には、事前に決めたサインによってチームに危険を伝えます。

例えば、本隊の車列が目的地に到着するシチュエーションで、異常なしであればカーブサイトに立つアドバンスはパーでVIP Car (VC)が停車する位置を表示しますが、異常がある場合にはグーを出すと決めておきます。こうすれば、グーサインを見た瞬間に本隊は異常を察知し、車列は止まることなく、そのまま通過していきます。夜の暗い道では、手のサインですと見えにくいのでフラッシュライトを使用します。通常のフラッシュライトでも点滅させたり、光を当てる場所を変えたりで、異常を伝えることは可能ですが、著者は色を変えることが出来るコンサートペンライトを使用し、緑なら異常なし、赤なら危険といったように色によって異常の有無を伝えるようにしていました。これが意外にフラッシュライトよりも分かりやすいと好評でした。日本では、ディスカウントストアなどでも安価で購入出来るコンサートペンライトですが、海外ではあまり売られていませんし、売っていても日本の何倍もしてしまうので、海外で警護をする際にはチームメートへのお土産として数本持っていくと確実に喜ばれます。これまでも何度も書いていますが、警護の仕方に正解は1つではありません。良いなと思ったアイデアは、どんどん試すことで自分なりの警護を確立していくことが出来ます。

なお、国連本部のように施設警備も同じ組織に含まれる場合には、警護チームと警備チーム間にシークレットコードを制定しておくことでより強固のDefense in Depthを構築することが出来ます。警備上の理由で本来のコードを紹介することは出来ませんが、例としてはアクセスポイントのアクセスを一時的に全て断絶するコードなどがありました。このコードは、警護チーム側から警備チームに要請することも出来ますが、通常は警備チームから警護チームにコード○○を実行したという連絡が入ります。こうしたコードが確立されていると詳細が分かなくてもアウターレイヤーで何らかの異常が起きており、警護チームも何らかのアクションが必要だということがすぐに分かり、初動の遅れによる被害の拡大を防ぐことが出来ます。


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