私も利用しているTwitterで、他人に対して否定的、もしくは攻撃的な方をときどき見かけます。そういったはコメントは、不要な争いごとの火種となり、精神的にも体力的にも消耗するだけで何も得られません。Twitterであれば、納得がいかない発言や同意できない発言でも無視をすれば大抵のことは済んでしまいます。しかし、現実世界ではそう簡単ではありません。納得がいかないからといって相手を無視してしまえば、相手に対して失礼ですし、相手が更に攻撃的になる可能性もあります。
ボディガードが、警護任務中に誰かと言い争いをするようなことがあれば、クライアントに迷惑をかけるだけなく、クライアントのイメージに泥を塗ってしまう可能性すらあります。そのためにもボディガードは、言い争いをさけながら、相手を説得する話術を学ぶ必要があります。
警察による暴力(Police Brutality, Excessive Force)を防ぐ目的で、アメリカの警察機関では、「the Use of Force Continuum」と呼ばれる武力についてのガイドラインを設けられています。以下は、National Institute of Justice (NIJ)のガイドラインを要約したものとなっています。国連本部警備隊の「the Use of Force Continuum」も、CEDを除けばNIJのものととても似たものでした。
Presence/Appearance
特に制服を着た警察官や警備員の場合、そこにいることを知らせるだけで抑止力になる場合があります。
Verbalization
存在を示すだけで足りない場合には、口答により注意を促します。
Empty Hand Control
相手を制すため武力を使いますが、その名の通り武器は使用しません。Empty Handには、2通りありSoft Technique(ソフト・テクニック)と呼ばれる相手の腕を取ったり、関節を決めてコントロールするものと、Hard Technique(ハード・テクニック)と呼ばれる殴りかかってくるなど攻撃的な相手に対して突きや蹴りなどを用いて相手をコントロールするものがあります。
Less-Lethal Methods
PR-24などの警棒、OCスプレー、テイザーなどのConducted Energy Device (CED)といった武器を使っての相手をコンロールします。
Lethal Force
相手から銃口を向けられる等、自分や周りの人に命の危険がある際に、他の選択肢がない場合においては銃(Deadly Weapons)等を用いて相手を制します。
以上のことからも分かる通り、拳銃や警棒といった武器と並び「Verbalization」もしっかりForceの1つにカウントされています。それだけVerbalizationは重要だということです。なおこのガイドラインは、警察のみに適応されるものではありません。民間警備会社の警護員にも同じことが言えます。
「Continuum(連続した)」とはありますが、必ずしも上から順を追って対応しないといけないわけではありません。相手が銃を突き付けているような状況では、Less Lethal Methodsを飛ばしてLethal Forceを使う場合もあります。つまり、相手の体格や武器の有無等から判断し、その状況に適した力をもって対応をしろということです。ただ、当然ながら出来る限り、最小限の武力、もしくは武力なしで相手を制すことが理想ではあります。
国連本部警備隊に入隊すると、the Use of Force Continuumのガイドラインを指導された後、護身術や逮捕術よりも先に教わるのが、「Verbal Judo (話術の柔道)」です。Verbal Judoは、英語教師から警察官へと転職をしたジョージ・J・トンプソンが提唱した話術で、アメリカでは警察機関のみならずビジネスでも利用されています。
ボディガードの話術②では、Verbal Judoの、「タクティカル8ステップス」と「タクティカル5ステップス」という2つのテクニックを少し紹介したい思います。
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