COVID-19パンデミックによって、職場へ行かずに自宅から仕事をするリモートワークが急激に増えました。さらに今後パンデミックが終息してもリモートワークを継続するという人が一定数出てくるでしょう。以前は、自宅以外で最も多くの時間を費やす場所が「職場」と言う人が社会人には圧倒的に多く、そのためにボディガードはWorkplace Violence(職場内暴力)にクライアントが巻き込まれぬよう注意をする必要がありました。
Workplace Violenceをご存じじゃない方もいるかもしれませんので、US Department of Labor(米労働省)の Occupational Safety and Health Administration (OSHA, 労働安全衛生局) の解釈を紹介しておきます。
“Workplace violence is any act or threat of physical violence, harassment, intimidation, or other threatening disruptive behavior that occurs at the work site. It ranges from threats and verbal abuse to physical assaults and even homicide. It can affect and involve employees, clients, customers and visitors.”
Workplace Violenceとは、職場内で起こる暴力、ハラスメント、脅迫等のいかなる脅威のことです。口答での脅しから始まり、最悪な場合には殺人にまで至ることがあります。これらは、従業員だけなくクライアントやカスタマー、職場を訪れるビジターに至るまで誰にでも起こりえます。
自宅以外で最も時間を費やす場所ということは、家族以外で、クライアントにコンスタントに近づく人たちとして挙げられるのが職場で会う人たち、つまり従業員(上司、同僚、部下)や顧客等です。リスクを完全に0にするのなら、クライアントを自宅などの安全な場所に閉じ込め、誰とも会わせないことです。しかし、そんなことを受け入れるクライアントはいませんし、そんなことが出来ると思っているボディガードもいません。そうしないと護れないボディガードに需要はありません。
クライアントの職場は、はたして安全なのか。アメリカの場合、採用の際にバックグラウンド・チェック(採用前の身元調査)を行っており、犯罪歴がある人間がそれを隠して紛れ込むようなことは稀です。因みにアメリカではバックグラウンド・チェックだけでなく、採用時に精神科医によるサイコロジカル・エグザムを行うところもあります。因みに国連本部警備隊でもバックグラウンド・チェックとサイコロジカル・エグザムがありました。そうした試みが盛んなアメリカでも、Workplace Violenceは職場で負傷する原因の第3位となっており、日頃から対応・対策が講じられています。
私が知らないだけかもしれませんが、採用の際にバックグラウンド・チェックや精神科医による診断を行っているという日本の会社は耳にしたことがありません。アメリカのように採用前に調査を行わない主な理由は費用なのでしょうが、多人種国家のアメリカと異なり、単一民族国家の日本では、皆が同じ教育を受け、同じ文化の中で育ったっているため、相互理解が他に比べ容易だと考えられているのも理由の1つだと私は考えています。事前調査の欠如故に、日本では問題が起きた後で詐称疑惑が浮き上がることがよくあります。あまりWorkplace Violenceの話題を聞くことがありませんが、これは忍耐強く、人に簡単に弱みを見せない日本人の気質が、Workplace Violenceがあっても打ち明けられず、公になってなっていないだけで、日本でもかなりの数のWorkplace Violenceが起こっていると思います。
幸いWorkplace Violenceは、理由もなくその場で突然起こる突発的ものよりも、多くは継続的な問題が積もりに積もって最終的に抑制が効かなくなり事件にいたる、いわゆる発展形のものです。Workplace Violenceの加害者には、事件を起こす前から色々な変化がみられます。
「Warning Signs of Workplace Violence」で検索してもらえれば、色々リストが出てくるので詳しく知りたい方はぜひ調べてみてください。因みに以下のような行動をするようになった人を見つけた場合には、担当者に早い段階でのアプローチ(会話)と問題解消(ケア)を促します。
- おかしな内容の手紙や写真を送り付ける
- 誰かにつきまとう(ストークス)
- こっそり出入りする
- 度々他の同僚たちと一緒に働くことを拒む
- 頻繁に他の同僚と口論になる
- 顧客に対しても交戦的な態度をとる
- 会社/組織のルールが守れない
- 会社/組織の備品を破壊する
- 会社/組織のプロジェクトの妨害する
- 被害妄想がある
- 自殺をほのめかす
- 欠勤が多くなる
- うつ病を患う
- 通常よりも大きな声で話す
- ビクビクしていて、小さなことにも驚く
- すぐに苛ついたり、焦ったりする
- 集中力が続かない
- 覚え(記憶)が悪くなった(すぐに言ったことを忘れる)
- 睡眠障害がある
- 自分が成功出来ないのは人のせいだと非難する
ボディガードには、クライアントがWorkplace Violenceに巻き込まれぬよう、クライアントの周りの人間の上記のようなちょっとした変化も察知できる広い視野が求められます。
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