海外での日本(人)ブランド②

ヘンリー&パートナーズのパスポートインデックス(2021)によると、日本のパスポートはビザなしで渡航出来る国が191ヵ国もあり世界1位にランクされています。

海外で日本人が事件・事故の被害者になったケースの話はよく耳にしますが、日本人が海外で加害者になったというケースはあまり耳にしません。外務省のサイトに「海外邦人援護統計」という海外渡航者のトラブル(事故、犯罪被害、犯罪加害、病気など)に際し、日本大使館・総領事館が何らかの対応を行った実績をとりまとめたデータが載っています。その「海外邦人援護統計」の2019年版によると、邦人の犯罪被害は4823件、それに対して犯罪加害は418件とかなり少なくなってます。邦人の犯罪加害の内訳は、(1)不法滞在等の出入国・査証関係犯罪、(2)喧嘩や家庭内暴力等の傷害・暴行、(3)スピード違反、駐車違反、や飲酒運転等の道路交通法違反の3つが主で殺人などの重犯罪の罪に問われることは実に稀なようです。

こうした実績が、海外での日本(人)の信頼となっており、ビザ免除での渡航が出来る国が多いのでしょう。実際、60以上の国に行きましたが、日本人+国連職員ということで出入国でのトラブルはほぼ経験がありません。質問すらされず、顔を見られただけで入国許可のスタンプがポンとパスポートに押されることもよくありました。

世界最強のパスポートを所持しているということは、それだけで世界で活躍するボディガードにとって大きな武器となります。

いくら国連職員だからといってビザを取るのが面倒な国がいくつかあります。カナダは、そんな国の1つでした。オフィシャルビザのアプリケーションは大抵1,2枚で質問も簡単なものが普通なのですが、カナダのビザアプリケーションは、4、5枚とページ数も多く、質問も本人だけでなく家族の情報まで細かく書かかされるものでした。

そのカナダに、クライアントが国境沿いの街バッファロー(アメリカ)でのオフィシャルの後にプライベートで行くことがありました。当初、私はバッファローの街のアドバンス、フィリピン人の同僚がカナダのアドバンスに割り当てられました。カナダ側は、半日程度のスケジュールだった為フィリピン人の同僚はバッファローを拠点に、アメリカとカナダを行き来して、バッファローでの警護も担いながらカナダのアドバンスもするというのが元々の計画でした。しかし、マルチプルエントリーのオフィシャルビザを申請したにも関わらず、フィリピン人の同僚が発行してもらえたのはシングルエントリーのビザでした。シングルエントリーのビザでは、アメリカとカナダを行き来する計画は実行できません。そこで、バッファローのみでカナダに行く予定ではなかった私が、彼の代わりにカナダのアドバンスをすることになったのです。フィリピンのパスポートでは、カナダには仕事、プライベートに関係なくビザを申請しないと渡航が出来ませんが、日本のパスポートならば6か月以内の滞在はビザの申請が不要だったからです。もちろん、クライアントはプライベートであっても、私は任務でカナダに入るので、オフィシャルビジネスとなり本来はビザを申請するべき状況だったので、カナダには私のみ丸腰で入国することで対応しました。

バッファロー市は、バッファローチキンウィングの発祥地として有名

バッファローとカナダを数日間に渡り、1日のうちに何度も車で行ったり来たりするアジア人なんて、かなり怪しいと思います。しかし、信頼の日本のパスポートの威力は絶大で、疑われることは一度もなく無事に任務を遂行することが出来ました。

海外で警護の仕事をしていて日本人で良かったと思ったこと、日本のパスポートの信頼度を実感したことはこれだけでなく、幾度とありました。

海外で生活する日本人の中には、現地で受け入れられる為に「日本人」というアイデンティティをあえて捨て、現地人のように振舞う人がいます。人それぞれの考え方があるので、それについて否定はしません。しかし、海外で活躍する日本人の警護人がほとんどいないこの状況では、アイデンティティを失わず、日本人の良さ、日本人らしさを伸ばし活かす方が、業界から求められる人材になれるのではないかと私は思います。


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