Advanceの仕事の1つに、クライアントが行く先々のオフィスや会議室、そしてホテルの部屋などの箱の安全確認(ルーム・サーチ)があります。クライアントの脅威レベルやリソースによってルーム・サーチの仕方は異なります。爆発物に関しては、爆発物探知犬を使うと効率が良く、とても有効です。利用できるリソースは、どんどん利用して効率的に仕事をこなしていくことは重要です。しかし、残念ながら爆発物探知犬は、誰でも簡単に利用できるものではありません。そこでボディガードは、爆弾探知犬やその他のリソースなしでも効果的なルーム・サーチが出来るようにしておく必要があります。
ルーム・サーチには、色々方法がありますが、今回は私が国連本部の警護チームで習い実際に行っていた方法を紹介したいと思います。これまでも一流のボディガードになる為には、それなりの常識を持ち合わせていないといけないと書いてきました。これは、ルーム・サーチにも言えます。それは、ルーム・サーチは、普通じゃないことを探し出す作業だからです。そのためには、普通が何かを知っておかなければなりません。
例えば、イスラム教徒のクライアントの部屋に大量のお酒が置いてあったら、何か変だと気がつかなければなりません。これに気がつくためには、厳格なイスラム教徒は、お酒を飲まないということを知っておかなければなりません。他にも、ゴミの回収は火曜と木曜なのに、その他の日にゴミが出ていたら何か変だと感じなければなりません。
先ず部屋に入ったら入口で一度立ち止まり、部屋の全体像をゆっくり見まわします。部屋に限らず、人でも同じことが言えますが、異常がないかチェックする際には、焦らず、ゆっくりと丁寧に1つずつ見ていくことが重要です。
パッと見た感じ、特に異常がなければ、細かく部屋を区切りチェックしていきます。国連本部の警護チームでは、部屋を床から天井まで;(1)Ground Level, (2)Eyes Level, (3) Ceiling Level, (4)Double Ceiling Levelの4つに分割します。その後、下から上の順(1から4の順番)で、外側から内側へとチェックしていきます。
棚の中や机の引き出しは勿論のこと、額縁や壁掛けの鏡などは裏などに何か隠されていないかも忘れずにチェックします。Technical Surveillance Counter-Measure (TSCM) equipment (盗聴器を発見する道具)があれば、盗聴器が仕掛けられていないかも確認します。 過去に盗聴の被害があり、盗聴器を仕掛けられることを心配しているクライアントの場合には、TSCMのスペシャリストによるサーチのアレンジも考えなければなりません。
ルーム・サーチをする際には、出来れば1人ではなく2人以上で行うことを推奨します。机やイスなどの重い物を動かし、下や隙間などをチェックする際に2人いると1人が持ち上げている間にもう一人で確認といったことも出来ます。
なおルーム・サーチを2人で行う場合には、部屋を左右で2分割し、お互いに外から中へと、下から上とチェックします。その後、サイドを交換してもう一度チェックすることで見落としをするリスクを減らすことが可能です。
部屋に天井点検口がある場合には、チェック後に鍵が出来るものは錠をします。なお確認後はタンパーテープを貼っておきます。
ルーム・サーチに慣れるまでは、チェックリストを利用したり、先輩ボディガードにダブルチェックをしてもらうなどして確認忘れがないように気をつけます。10年間、国連本部で警護に従事をしてきて、ルーム・サーチで異常を発見したことはありません。何もないことが普通になってしまうと、慢心が生まれいずれ何か異常があっても見落としてしまう可能性があります。ボディガードは、常に初心を忘れず、基本に忠実であるべきなのですが、これがなかなか難しいのです。そのため、時々一緒にルーム・サーチをするパートナーに何かを隠してもらい、それを探し当てるなどの工夫も必要となります。
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