警備会社にとって警備員は例えるなら客に売る「商品」です。少しでも良い商品を提供しようと思わない会社には企業努力が足りないと思います。そんな警備会社が警備業に誇りを持っているとも思えません。
中国製品と言えば、かつては「安かろう悪かろう」でしたが今は品質や性能が向上し、その存在は世界から「メイド・イン・ジャパン」の存在を消し去ってしまっています。
国内や東南アジアの一部に根強いメイド・イン・ジャパン信者がいるのは知っています。著者の両親もそうです。しかし、海外での日本製の評価は近年著しく落ち込み、品質と性能に他と差がほとんどないにも関わらずただ値段ばかり高い日本製を好んで購入する人を海外では見かけません。
著者がこれまで出会った日本の警備会社の大半は、言わばかつての中国製品です。今後社員教育に力を入れる警備会社が出現すれば、現在の中国製品のような存在になれるのではないかと考えています。
警備会社に教育/訓練に費やす時間もお金もないのなら、採用時に元警察官や元自衛隊員といった既にある程度の知識と経験を持ち合わせた人材を雇うのが、商品の品質や性能を保つ上で重要だという意見を耳にします。これは間違いではありませんが、法律も技術も日々進化しています。それに対応し、時代遅れにならない為には過去に得た知識や技術に加え、現在進行形で知識と技術を取得していかなければなりません。そうでなければ、スマホ全盛期にありながら未だ頑なにガラケーを使い続けているのと似た状況になってしまいます。ガラケーはその任務を終え、次第にサービスが終了していき、しまいには使えなくなってしまいます。
日本国内では、一度取得してしまえば期限がなく、あっても手続きと支払いのみで更新できてしまう資格が多くありますが、これは業界にとって好ましくない事です。海外ではASISのCPPやIFPOのCPOのように更新時に資格取得時もしくは前回の更新以降どれほどの物を学び、経験してきたかを証明しなければならない資格が数多く存在します。EMT(救急救命士)の資格は、数年ごとに試験を受け、それにパスしなければなりません。警備とは関係ありませんが、英語試験であるTOEICやTOEFLにも有効期限があり、その期限を過ぎてしまえば再度テストを受けることになります。第2言語の場合、使っていなければ単語などを忘れてしまうからでしょう。数十年前ペラペラ話すことが出来た言語も、ずっと使う事なく、勉強をすることもなく過ごしていては、数十年前と同じだけの点数を取る事は難しいでしょう。警備や警護だって英語と全く同じです。著者は、警護の現役は退きましたが、警護技術を指導する立場上、そして今も警備に関わる仕事をしている関係で、少しでも仕事のためになりそうな知識や技術を勉強し、自身の知識/技術のレベルを測る目的で関係する資格も積極的に受検するようにしますし、今も現役として警護業界に身を置く元同僚たちから最新情報を得るようにしています。
日本で警備業は有効求人倍率が高い職種の1つとして有名です。仕事はあるのに働き手がいないのには警備業に対する良くないイメージが大きく影響していると思われます。新任/現任教育を受けただけのほぼ素人を現場に出すような警備会社が残念ながら多すぎます。高い志を持って警備業に入ってきた人でも、そんな状況ではモチベーションを維持する事は非常に難しいでしょう。志もモチベーションもなく、心が伴わない警備員は他に「頼りない」、「だらしない」、「使えない」といったイメージを植え付けます。「客」は、人材育成をする時間や費用を抑える為に警備会社のサービスを利用しています。お客は価値に納得したら、その対価を払います。いつまでも使い物にならない素人警備員を送られては警備会社を利用する価値はありません。ただそこにいるだけの警備員たちは近い将来ロボットに簡単に職を奪われるでしょう。
そうさせない為にも、警備会社は社員を大事にし、教育や訓練を施し、警備員も自身を高めることに勤めなければなりません。
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