昨年(2020年)はCOVID-19の影響もあり直前に中止になってしまいましたが、例年3月に東京ビックサイトで開催されているSecurity Show、開催地である東京は緊急事態宣言が延長されたことで今年も中止になるのではとの懸念もありましたが無事に2021年3月9日から12日の4日間開催されました。私も3日目の3月11日に行ってまいりましたので、その感想を含めたレポートです。
感染症対策として、参加者は事前にオンラインでの登録をすることになります。登録が済むとメールでQRコードが付いた参加証が送られてくるので参加者はそちらを印刷して会場に持ってくると無料で入場することが出来ます。Security Showは、警備業従事者でなくてもどなたでも参加することが可能なイベントです。
感染症対策として、リアル展示会の他にオンライン展示会も同時期に開催されていましたが、こちらは見ていないのでどんな感じなのか分かりません。もし来年もオンライン展示会が行われるようであれば、来年はオンライン展示会への参加で良いかなとも思っています。オンライン展示会は、今まで遠方に住んでいて参加したくても出来なかった人たちにとって喜ばしいことなので、COVID-19が終息した後も続けて欲しいです。
事前登録やオンライン展示会の効果もあり会場は密になることもほぼなく、見たいブースもすぐに見ることが出来てとても良かったと思います。ただCOVID-19の影響だと思うのですが、展示ブースの数がかなり少なく小規模だった事と真新しいものが少なかったことは残念です。
そんななかでも、いくつか興味を持った展示物があったのでご紹介します。
まずはマニュアル動作成ソフト「Dojo」です。どこがセキュリティと関係しているのか分かりませんが、その名の通りマニュアルを勝手に作成してくれるアプリです。実演をしてもらったのですが、Dojoのアプリを開いた状態で、他のアプリを操作するとそのアプリのマニュアルが勝手に出来てしまっているという驚きのアプリです。今は、あまり必要性を感じませんが、ホテルで勤務した際に新しいシステムをいくつか導入したのですが、そのマニュアル作りがなかなか面倒だったので、そんなときにこのアプリがあったらどんなに便利だったかと思ってしまいました。ホテルのような従業員の出入りが激しい職種や、従業員が多い会社で覚えるのが面倒なシステムを使っているところがあれば、Dojoはおそらくかなり役立つはずです。
テイセンのブースでは、なかなか興味深い話を聞かせてもらえました。空港で普通に見かけるようになったボディスキャナーですが、こちらで作られているミリ波を使用した精密身体検査装置は空港用に開発されたものの、現在は空港よりも倉庫などでの需要が高いらしいのです。その用途は、空港とは全く逆です。空港は危険物の持ち込みを防ぐ目的ですが、倉庫では持ち出し禁止の物を持って出ていかれないようにするのが目的ということです。言われてみると確かにそんな利用方法も出来るんだなと納得しました。従業員による盗難で悩む会社は、従業員入り口に設置を考えてみてもよいかもしれません。
そして最後は、Tokyo Uniformのブースです。人に脅威を感じさせないスタイリッシュなユニフォームを宣伝していましたが、私はセキュリティのユニフォームは緊急の際に一目でセキュリティだと分かるそれらしいユニフォームが一番だと思っています。頂いたパンフレットを拝見したところ、そのユニフォームは確かにスタイリッシュなんですが、セキュリティには見えません。少し前に発表されたオリンピックの警備員の制服も同じような印象を持ちました。また、Tokyo Uniform×Careanのユニフォームは、見た目がセキュリティらしいのは良いのですが、ストレッチ素材を使用しているためなのかユニフォームのしわが目立ち、海外のしわがないようにピンと張ってユニフォームを着る姿に慣れている私の目には、どこかだらしなく映りました。警備の制服を作る会社は、もう少し現場や専門家の意見も反映させるべきかと思います。
展示会以外では、2つのセミナーも聴講してきました。セミナーは、参加証とは別に、事前に参加を申し込むとQRコードが付いたセミナー参加証がメールで届きます。当日会場で申し込むことも出来るようですが、席数制限があるので事前に申し込んでおいたほうがスムーズに参加することが出来ます。
私が聴講したセミナーは以下の2つです。
- 一般社団法人総合防犯士会主催セミナー「商業施設の防犯対策」
- 公安調査庁主催セミナー「サイバーセキュリティ攻撃等の現状」
まずはどちらのセミナーも無料なのと、時間に制限があるので仕方がない部分もあるのですが、質疑応答なしの一方的にパネラーが話すだけで終わるスタイルのセミナーだったのと、聴講者をトピックに引き込もうという努力がほぼ見られなかったことは少し残念でした。こういうスタイルのセミナーであるのなら、録画したものをYouTubeで流すだけで十分なのではと思ってしまいました。
「商業施設の防犯対策」というタイトルですし、Security Showは誰でも参加できるイベントだとは言え、実際のところは警備業関係者が多いイベントなので、少しは踏み込んだ内容なのかと期待していたのですが、実際のところは基本的な「万引き対策」で、対策方法も海外ではかなり前から普通に実践されているものばかりでした。例えば、万引き予防対策に効果的だと紹介された「声がけ」ですが、これはアメリカの大手家電ストアのBest Buyが1995年ごろには既に万引きに効果的だと始めています。セルフレジに鏡を付けるなどもアメリカではかなり前から導入されていましたし、監視カメラのモニターを客に見える位置に設置させるパブリックビューイングもそうです。
このセミナー中唯一、Security Showのセミナーらしさが見えたのは、最後のパネラーの一般社団法人総合防犯士会理事事業部会副部会長・小林宜生氏が防犯カメラの接地位置によるレンズやフォーカスの違いといったテクニカルな部分を紹介した時ぐらいでした。
「万引き対策」というトピックについてですが、初日に「小売業等のデジタルトランフォーメーション&ロスプリベンションの最新事例」、そして最終日にも「新しい時代のロス対策・万引き対策」があり、被りすぎているのも残念です。もう少し日によってセミナーで扱われるトピックが異なるようにするなどの対策が主催者には求められます。
「サイバーセキュリティ攻撃等の現状」というセミナーに関しては、最初に冊子が貰えるのですが、正直それを読めば十分という内容で、残念ながらわざわざ30分会場で座って聞くほどのものではありませんでした。というのも、中国、ロシア、北朝鮮がらみの過去事例を紹介するだけで、日本ではこれらの事例を基にどのような対策などが取られているのか具体的な例を聞きたいところなのですが、そういった話はほぼありませんでした。
いろいろ厳しいことも書きましたが、これはCOVID-19で厳しい状況の中でも開催にこぎつけた主催者への今後の期待を込めてのものです。今年のSecurity Showは終了してしまいましたが、今年参加出来なかった方は、また来年3月にパワーアップして開催されるSecurity Showにぜひ参加してみてください。
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