Tourniquet(ターニケット)は、止血帯のことです。いつごろからかサバイバルゲームが流行り、ミリタリーグッズに興味を持つ人が増えたこともあり、医療従事者でなくてもターニケットが止血帯だと分かる人も増えました。
紐と棒だけの原始的な道具ですが、シンプルな道具だけに故障で使えなくなる心配もありませんし、それでいて緊急時に大きな力を発揮する便利な道具なのでニューヨークの国連警備隊にも2018年頃に正式装備の1つに加えられました(※警護チームは、2018年以前から携帯をしていました)。
YouTubeにその使い方を紹介する動画がたくさんあげられており、誰でも簡単に使い方を学ぶことが出来るようになっています。
しかし、残念ながらその動画の多くは、ただ単に使い方を説明するだけのものです。ターニケットは、使い方によって命を救うことも出来る便利な道具なのですが、使い方を間違えるとその逆にもなりえる危険な道具でもあります。
私は、国連で何度も訓練を受け、EMT-Bの免許を取る際にも訓練を受けており、指導をすることも可能だとは思います。しかし、あえて自分で人にその使い方を紹介しないのは、専門家ではないからです。個人的な意見でありますが、使用法が難しい道具ではいものの、きちんと知識と経験がある専門の指導者から指導をしてもらうべき道具だと思っています。
ターニケットには、必ず使用した時間を書くタグが付いており、ここに時間をきちんと書くことで、その後医師がすぐに処置できるようになっています。簡単なことですが、これを怠ると最悪の場合、壊死を引き起こし腕や足を切断することもあります。
医師がすぐに対応できない戦場などであれば、命を守るために多少の代償を払ってでもターニケットを選択する場面もあるかと思います。しかし、日本や海外でも都市部ではターニケットを使わざるを得ない状況はほぼありません。切断による大出血の場合には、ターニケットを選択することになるかと思いますが、戦場以外でこのような事態に出会うとしたら工場などが考えられます。このようなリスクがあるような職場では、定期的に専門家から適切な対応が出来るように定期的に専門家から指導を請うべきです。
ニューヨークのEMTでも、昔はターニケットを使うことが結構あったようですが、今では「ターニケットはLast Resort」というふうに叩き込まれます。
Resort(リゾート)というと日本では、行楽地や保養地のイメージが強いのでラスト・リゾートなんて書いちゃうと「最後の楽園」なんて勘違いする方もいるかと思いますが、Last Resortは「最後の手段」、「苦肉の策」、「奥の手」という意味があります。東京やニューヨークのような都市であれば、119番をすれば5分、長くても10分もあれば専門の知識を持った専門家が到着します。つまり、現代では戦場などではない限り、止血は圧迫止血で対処をしながら、医師や救急隊を待つのが基本で、本来必要のない四肢の切断等につながる可能性がある素人判断でのターニケット使用は避けた方が良いという考え方です。
ボディガードになりたいと思っている人が、ターニケットがどんな道具で、どんな風に使うか調べ、理解しておくことは良いことです。しかし、きちんとした訓練を受けていない人が、安易な気持ちでターニケットを携帯したり、推奨したりするのは控えるべきだと思います。
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